第190話和春深二十首 其九

和春深二十首 其九


何處春深好 春深遷客家 一杯寒食酒 萬里故園花

炎瘴蒸如火 光陰走似車 爲憂鵩鳥ふくちょう至 秖恐日光斜


「春深まる」に和する 二十首 その九


春が深まるのが素晴らしいとは、どこの場所を言うのか。

春は、流刑の地でも、深まる。

寒食で一杯の酒を飲めば、万里の果て、故郷の花が目に浮かんでくる.

南方酷熱の熱気は、まるで火に蒸されるかのようだ。

その苦しさの中で、時間だけが車のように、あっと言う間に過ぎ去っていく。

フクロウの不吉な鳴き声に、不吉の訪れと怯え、今日も日没をただただ恐れる。


※遷客:流刑者。

※寒食:冬至から百五日目。その前後三日間は煮炊きをせず、冷たい食事をとる風習があった。

※炎瘴:南方特有の熱気。風土病を起こす毒気として、考えられていた。

鵩鳥ふくちょう:フクロウ。不吉な鳥と考えられていた。(日本では福をもたらす鳥)


○かつての左遷時代を思い出しているのだろうか。

 南方特有の熱さに苦しみ、時間だけが無駄に過ぎていく。

 将来を悲観し、故郷に帰りたくなるのは、白楽天に限らない。

 そんな場所で、何が春の素晴らしさなのか。

 不遇時代の気持を、本当に素直に詠んでいる。

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