第189話宿裴相公與化池亭

宿裴相公はいしょうこう與化こうか池亭ちてい

(兼蒙借船舫遊汎)

林亭一出宿風塵 忘卻平津是要津 松閣晴看山色近 石渠せっきょ秋放水聲新

孫弘閣鬧無閑客 傅說舟忙不借人 何似掄才濟川外 別開池館待交親



裴相公はいしょうこう與化こうかの池の亭に宿泊した。

(兼ねて、舟をお借りして遊覧させていただいた)


林の中の亭に出かけ、その清らかな雰囲気に包まれると、この貴人の平津のお屋敷が要路であることを忘れてしまう。

松林に建つ閣からは、よく晴れた日なので、山の姿が間近に迫ってくる。

石でできた堀を見ると、秋ならではの涼しい水が流れている。

身分が高く富貴な客を集めようと、公孫弘が立てた閣は、賑わっていて閑な人はいない。

天子を補佐する溥説は、その多忙ゆえ、船を他人に貸すことも出来ない。

人材を選別して国務を遂行しながら、池のほとりにお屋敷を建て、親しい人々をもてなすとは、何と素晴らしい人なのだろうか。


裴相公はいしょうこう:憲宗、穆宗、敬宗、文宗の四代に渡り宰相等の役職を歴任した。

與化こうか:長安の坊里名。

※池亭:池のほとりの亭。

※風塵:清らかな雰囲気。

※平津:漢の武帝の時代に、宰相の公孫弘を平津公に封じたことから、地位の高い官僚を表現する。公孫弘は、東閣という屋敷を設けて、諸賢人を接待した。

※溥説:殷の高宗が夢で賢人を見て、その姿をした人を求め、溥説を見つけて登用、溥説も優れた宰相として補佐した。


○大和二年(828)、長安の作。

裴相公はいしょうこうの長安の屋敷に招かれた時の作。

 国務において最重要な地位にいて繁忙を極める中においても、風雅な屋敷で客をもてなす。その素晴らしさを褒め称えている。

 白楽天は、この裴相公はいしょうこうに呼ばれて、再び長安に戻った。

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