第188話寄殷協律

寄殷協律


五歳優游同過日 一朝消散似浮雲 琴詩酒伴皆抛我 雪月花時最憶君  

幾度聽鷄歌白日 亦曾騎馬詠紅裙 呉娘暮雨蕭蕭曲 自別江南更不聞


五年の間、君と過ごした楽しい日々は、ある朝、浮雲のように消え去ってしまった。

琴・詩・酒を楽しんだ仲間は、皆私の前からいなくなり、

雪・月・花の時期には、君をひたすら思い出す。

何回「黄鶏」の歌を聴き、「白日」の曲を歌ったろう。

馬にまたがり、紅衣を着た美人を詠じたこともあった。

呉娘の「暮雨蕭々」の曲は、江南で君と別れてから、一度も聞いていない。


※殷協律:白楽天が杭州、蘇州刺史だったことの属官。


○大和二年(828)、一時洛陽に赴いた時の作。

○詩を寄せた殷協律は、杭州・蘇州での属官にして遊び仲間。

○ここでは特に江南での遊びを懐かしんでいる。


※この詩句がもととなり、「雪月花」は四季の代表的風物をあらわす日本語として定着した。


いくとせの いく万代か 君が代に 雪月花の ともを待ちけん

(式子内親王『正治初度百首』)

白妙の 色はひとつに 身にしめど 雪月花の をりふしは見つ

(藤原定家『拾遺愚草員外』)

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