第187話和寄楽天(2)

頃我在杭歳 値君之越日 望愁来儀遅 宴惜流景疾

坐耀黄金帯 酌酡赬玉質 酣歌口不停 狂舞衣相拂

平生賞心事 施展十未一 會天始唖唖 離嗟乃喞喞

餞筵纔収拾 征棹遽排比 後恨苦緜緜 前歡何卒卒

居人色惨憺 行子心紆鬱 風袂去時揮 雲帆望中失

宿酲和別思 目眩心忽忽 病魂黯然銷 老涙凄其出

別君秖如昨 芳歳換六七 倶是官家身 後期難自必


以前、私の杭州在任の時に、偶然ではあるけれど、君の越に向かう日が重なった。

君を待つ時には到着が遅れることを愁い、酒席では時の過ぎ行く速さを惜しんだ。

黄金の帯をきらめかせて座り、紅玉の顔をさらに染めて酒を飲んだ。

互いに酔って歌いだせば口を閉じることはなく、衣を翻して狂ったように舞った。

ずっと楽しみに計画していたことは、十に一つもできなかった。

君の顔を見てようやく笑い、君が去ればため息ばかり。

送別の宴が終わると同時に、旅の舟が準備された。

未練はこれから後、長々と続くのに、先の喜びは極めて急いで過ぎていく。

残された人の顔は痛ましく、去りゆく人の顔は憂鬱に沈む。

別れに際して振る袖は風を受けてふくらみ、視界から白い帆が消えていく。

この別れの悲しさと二日酔い、目はしょぼしょぼとして心は空っぽだ。

心は落ち込み何も考えられず、この老人の目から寂しい涙があふれ出る。

君と別れたのは、つい昨日のように思えるけれど、実はあの時から正月を六、七回過ぎている。

二人とも、官職を得ている。

次に会う機会が、必ずあると言うのは、難しいことなのだ。


○大和二年(828)、長安の作。

○杭州在任時に、越州の元稹との宴席を懐かしんでいる。

 何とかして再会をしたいと思うけれど、広大な中国でのこと、なかなか困難を認識している。(白楽天の願いが通じたのか、翌大和三年に再会を果たす)




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