第176話卯時酒(1)

卯時ぼうじ


佛法贊醍醐 仙方誇沆瀣こうがい 未如卯時酒 神速功力倍

一杯置掌上 三咽入腹內 煦若春貫腸 暄如日炙背

豈獨肢體暢 仍加志氣大 當時遺形骸 竟日忘冠帶

似遊華胥かしょ國 疑反混元代 一性既完全 萬機皆破碎


卯時ぼうじの酒


仏門では醍醐の味を褒め称え、仙人の処方は沆瀣こうがいの力を誇りとする。

しかしそれよりは卯時の一杯の酒である。

まるで神業のように迅速に、倍する効果がある。

一杯の酒を掌に持ち、三回に分けて腹の中に流し込む。

すると春の気配が体内に満ち、体全体が温まる。

寒い背中も、太陽の光に包まれたかのように、暖かくなる。

身体の硬さをほぐすだけではない、精神さえも広々としてくる。

身体の苦しみなどはすぐに消え去り、一日中、煩わしい官僚の世界のことなど、忘れてしまう。

まるで華胥かしょの国で遊んでいるかのようだ。

大宇宙の始原の世に戻ったかのようだ。

全ての根源の本性が完璧にして純粋な状態となり、この世のつまらない計略などは跡形もない。


※卯時酒:卯時は午前六時頃。朝に飲む酒。

沆瀣こうがい:仙人の食物。

※「煦」、「暄」は、暖かいこと。

華胥かしょ國:太古の黄帝が夢の中で遊んだ楽園。

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