第171話題霊巌寺
題霊巌寺
(寺即呉
娃宮屐廊尋已傾 硯池香径又欲平 二三月時但草緑 幾百年来空月明
使君雖老頗多思 攜觴領妓處處行 今愁古恨入絲竹 一曲涼州無限情
直自當到今日 中間歌吹更無聲
霊厳寺に題する。
(この寺は、すなわち、呉の館娃宮である。鳴屐廊、硯池、採香径等の遺跡がある)
館娃宮、そして鳴屐廊も、時の経過により、すでに傾いてしまった。
硯池と採香径も、いずれは跡形もなく消え去ると思う。
この春の盛りに、草の緑が広がるのみ。
月明かりは、何百年も、空しく照らすのみだ。
確かに老いた太守ではあるが、いにしえへには、多くの思いを持っている。
杯を手に持ち、妓女を伴い、あちらこちらを散策する。
今ここにいる人たちの愁い、そして古人の悲しみが、鳴らす楽の音に宿る。
涼州の一曲には、無限の情が籠められている。
それは往時から、そのまま今この時に伝えられたもの、その間には一度も奏でられたことはない。
※霊厳寺:蘇州の西。霊巌山に立つ寺。元は春秋戦国時代の呉の宮殿と言われている。蘇州近郊の名勝地。
※館娃宮:春秋戦国時代の呉王夫差が美女と呼ばれた西施のために建てた宮殿。
※鳴屐廊:霊厳寺の廊下。西施が歩くと音を立てたという。
※硯池:霊厳寺の山頂の池。
※採香径:呉王が舟を浮かべて美女に香り高い草花を採らせたという渓流。
※二三月:春の盛り。
○宝暦二年(826)、蘇州の作。
○蘇州の古跡にして名勝地の霊厳寺を訪れ、感慨に浸っている。
○杯、妓女、曲の演奏などは、古き時代への鎮魂あるいは供養なのだろうか。
確かに何もないような遺跡、崩れかかった遺跡に、深い思いを感じることがある。
白楽天の叙情性や情感を強く感じる詩と思う。
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