第170話眞娘墓

眞娘しんじょう

(墓在虎丘寺)


眞娘しんじょう墓 虎丘道

不職眞娘鏡中面 唯見眞娘墓頭草 霜摧桃李風折蓮 眞娘死時猶少年

脂膚荑手ていしゅ牢固ろうこ 世間尤物ゆうぶつ難留連

難留連 易銷歇しょうけつ 寒北花 江南雪


眞娘しんじょうの墓

(虎丘寺に墓がある)


眞娘の墓、虎丘への道。

眞娘その人本人の面影は見たことはない。

今は唯、眞娘の墓に生える草を見ている。

桃李の花を霜が打ち砕き、蓮の花は風がへし折った。

まだ若さあふれる時に、眞娘はこの世を去った。

白く潤いのある美肌、若芽のように白く柔らかい手、やわやわとした姿態。

とかく美女はこの世には留まることは難しい。

留まることは難しく すぐに消え去ってしまう。

それは 寒い北方の花のように 江南の雪のように。


眞娘しんじょう:蘇州の有名な妓女の名前、白楽天自身は顔をあわせたことがない。

荑手ていしゅ:若芽のように白く柔らかい手。

※不牢固ろうこ:がっしりとはしていない(やわやわとしている)。

尤物ゆうぶつ:普通とは異なること。美女をいう。

銷歇しょうけつ:消え去ってしまうこと。


○宝暦元年(825)、蘇州の作。(宝暦二年説もあり)

○夭折して伝説化していた妓女の墓を訪れ、詩を読んでいる。

○よほど美しい妓女絵でも見たのだろうか、なかなかロマンチストである。

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