第166話池上早秋

池上早秋


荷芰かき参差しんし 新秋水滿池 早凉生北檻 残照下東籬

露飽蝉声懶 風干柳意りゅうい衰 過潘二十歳 何必更愁悲


早秋の池のほとり


蓮や菱の緑が、入り混じっている。

今は初秋、池の水は満々としている。

池の北側の柵のまわりは、早くも涼風が吹く。

夕日は東の籬を照らして、沈んでいく。

蝉は飽きるほど露を吸い、その鳴き声もけだるい。

柳は風に潤いを与えて、生気も陰りをみせる。

潘岳は白髪を見つけて嘆いたけれど、私はその歳を二十も越えている。

今さら、どうして悲しむことなどあるのだろうか。


荷芰かき:蓮と菱。

参差しんし:不揃いに入り混じる様子。

※北檻:池の北側の手すり、柵。

※蝉:蝉は露だけを吸う清浄な生き物と考えられていた。夏から秋に変わり、その鳴き声も弱くなってきたのだろうか。

※過潘~:「潘」は西普の詩人潘岳。その「秋興の賦の序」で、「三十二歳の時に始めて自らの白髪を見た」という詩を作った。尚、白楽天はこの時期は五十四歳。


○宝暦元年(825)、蘇州の作。

○季節の移り変わりの時期を、簡潔にして余韻を感じさせる表現でまとめている。

 

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