第161話履道新居二十韻(1)

履道新居二十韻


履道坊西角 官河曲北頭 林園四鄰しりん好 風景一家秋

門閉深沈樹 池通淺沮せんしょ溝 拔青松直上 鋪碧水準流

籬菊黃金合 窗筠そういん綠玉稠 疑連紫陽洞 似到白蘋洲

僧至多同宿 賓來輒少留 豈無詩引興 兼有酒銷憂


履道里りどうりの新居 二十韻


履道の坊里の西の角で、湾曲した官河の北側に位置している。

四方を園林に囲まれた景色が、素晴らしい。

秋の美景が屋敷全体を覆っている。

幾重にも生い茂る木々が門を閉ざし、池にはサラサラとしたせせらぎが流れてくる。

松の木は、青く抜き出るように真っ直ぐに伸び、豊かなな水の流れは碧を敷き詰めたかのようだ。

垣根の菊は、その黄金の花びらを一つに合わせ、窓辺は竹が緑の玉をあふれさせている。

まるで仙界の紫陽洞にもつながるかと思う風景、白い浮き草が浮かぶ江南の水辺にいるかのようだ。

僧侶が訪れれば何日も泊まり、客人が来ればしばらく引き留める。

興趣を思い起こす詩もあるし、その上憂いを消す酒もある。


※履道坊:履道の町の一区画の名。履道里。

※官河:運河。「曲」はその湾曲した部分。

※深沈:鬱蒼と木々が繁る様子。

淺沮せんしょ溝 :淺沮せんしょは、水の浅い様子。溝は池に水を注ぎ込む水路。

※紫陽洞:道教の聖地。 

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