第158話西湖留別
西湖
征途行色慘風煙 祖帳離声咽管絃
緑藤陰下鋪歌席
西湖に別れを告げる。
旅の途に就く今この時、この周囲の風景のなんと心を傷めることか。
とばりの中からは、別れの音楽が流れ出し、管弦の音はまるで咽び泣くようだ。
翠の眉を引いた妓女に頼みたい、五頭立ての太守の馬車を引き留めないでおくれ。
天子の恩により授けられた職は、三年の限りと決まっていることなのだ。
思えば緑の藤の木蔭で宴会を開き、蓮の花咲く湖で 妓女たちと船で遊んだ。
あちこち見わたせば、全ても懐かしい場所ばかりだ。
とりわけ別れがたいのは、 西湖のほとりの美しさ。
※留別:離れる人が残る人に対して与える詩。
※行色:出発の様子。
※風煙:風光。
※祖帳:送別の際に、路傍に張る幕。
※離声:別離の音楽。
※五馬:太守は五馬立ての馬車に乗った。
※
○長慶四年(824)、杭州を出発する時の作。
○白楽天は杭州刺史から、洛陽に転勤となる。
白楽天としては、好みに合った杭州から離れるに際し、本当に寂しさを感じたらしい。名残惜しさが詩の中にあふれている。
※次回以降、洛陽時期の詩に移ります。
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