第154話紫陽花

紫陽花

(招賢寺有山花一樹 無人知名 色紫気香 芳麗可愛 頗類仙物 因以紫陽花名之)


何年植向仙壇上 早晩移栽到梵家 雖在人間人不識 與君名作紫陽花


紫陽花

招賢寺には、野生の花樹が一本生えていた。

その名を知るものは無い。

色は紫にして、香り高い。

そのかぐわしさ、美しさが好ましい。

本当に仙界の花のように思える。

そう思ったので、紫陽花と名付けた。


いつの頃に仙界に植えられたのだろうか。

そして、いつの頃にお寺に植え替えられたのだろうか。

今は人の世にあるのに、その名を誰もが知らないと言う。

そういうことならば、私が君を紫陽花と名付けることにしよう。


※招賢寺:杭州の寺。

※仙壇:仙界の祭壇。

※早晩:いつか。時の疑問詞。

※梵家:寺


○長慶四年(824)、杭州の作。

○白楽天の名付けた花が日本の「アジサイ」と同じかどうかは特定できない。

 つまり日本の「アジサイ」には、香りはほとんどない。

 共通するのは「紫陽花」という漢字だけになる。


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