第153話春題湖上

春題湖上


湖上春來似畫圖 亂峯らんぽう圍繞いじょう水平舖 松排山面千重翠 月點波心一顆珠  

碧毯へきたん線頭抽早稻 青羅裙帶くんたい展新蒲 未能抛得杭州去 一半勾留是此湖


春に湖上で題する。


湖上の春は、まるで風景画そのものだ。

周囲は山々に囲まれ、水面は静かに平らに広がっている。

山には松が並び緑が限りなく重なっている。

そして湖面に浮かぶ月は一粒の真珠のように輝いている。

緑の毛織の糸筋のように見えるもの、それは稲の穂先。

また青い薄絹の帯に見えるものは、連なっている蒲の若葉だ。

なかなか杭州から背を向け去ることが出来ないのは、おそらく、この湖が私を引き止留めるからなのだ。


※湖上:杭州の西湖。景勝地として名高い。

※排:排列する。

碧毯へきたん:緑色の毛織物。

※青羅:青い色の薄絹。

裙帶くんたい:裳の帯。


○長慶四年(824)、杭州の作。

○屏風に書きたくなるような詩、のどかで静かな春の湖が広がっている。

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