第145話杭州春望

杭州春望


望海樓ぼうかいろう明照曙霞しょか

(城東楼名望海楼)

護江堤ごこうてい白蹋晴沙せいさ 濤聲とうせい夜入伍員ごいん廟 柳色春藏蘇小そしょう

紅袖織綾誇柿蒂してい

(杭州出柿蒂してい花者 尤佳)

青旗沽酒趁梨花

(其俗醸酒 趁梨花時熟 號爲梨花春りかしゅん

誰開湖寺西南路 草綠裙腰くんよう一道斜

(孤山寺在湖洲中 草緑時 望如裙腰くんよう


杭州の春を眺める。


望海楼は明るく、早朝の彩雲の光に輝いている。

(町の東にある楼閣で、その名を望海楼という)

護江堤ごこうていは白く光に照らされた砂を踏みしめる。

夜になると、波の音が伍員ごいん廟 に届き、春になると柳の緑が蘇小そしょう小の家を包み込む。

紅の袖をひるがえし、織り職人は柿蒂していの綾を誇らしげに織っている。

(杭州では柿蒂してい花というものがあり、大変上質である)

青い旗が風に揺られ、梨の開花に合わせて、酒屋は春の酒を売る。

(この土地の風習として、酒を梨の花が咲く季節に合わせて熟成させる。そしてそれを梨花春と名付けている)

誰が作ったのか、湖中の寺に至る西南の道がある。

緑の草におおわれて、ゆったりとした腰のくびれのように、一筋の道が斜めに続いている。

(孤山寺へ続く道は、湖の砂州の中にある。草が緑になる時期に見ると、腰のくびれのように見えてくる)


※望海楼:杭州の町の東の楼閣の名前。

曙霞しょか:早朝の彩雲。

護江堤ごこうてい:治水のための護岸工事をした堤防。

晴沙せいさ:日光に照らされて輝く砂。

伍員ごいん廟 :春秋時代の楚の伍員を祀った廟。父と兄を殺され、楚から逃げて呉に仕えた。後に楚を破り、復讐を遂げた。しかし、呉王と対立したため、死に追い込まれた。

蘇小そしょう家:南斉の時の妓女、蘇小小の家。

柿蒂してい:杭州特産の織物。蒂は「へた」

裙腰くんよう:下半身に着ける裳の腰の部分。


○長慶三年(823)、杭州の作。

○杭州名物案内のような雰囲気。

○白楽天にとって、気に入った土地のようだ。江洲や忠州の時のような違和感を書いていない。

○白、紅、青、緑といった色を書くことによって、詩全体が明るくなっている。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る