第144話登商山最高頂

高高此山頂 四望唯煙雲 下有一條路 通達楚與秦

或名誘其心 或利牽其身 乘者及負者 來去何云云

我亦斯人徒 未能出囂塵ごうじん 七年三往復 何得笑他人


商山の山頂に登る。


この山の頂は、なんと高いところであるのか。

四方を望んでも、ただモヤと雲しか目に入らない。

一条の道が、下に伸びている。

楚の国、そして秦の国へと伸びる道だ。

名声に心を誘われて道を行くものもあり、また、利益に身を引かれて行くものもあるだろう。

馬に乗るもの、荷を背負うもの、実に様々な人が入り混じり、往来している。

思えば、この私も、この人たちと同じである。

この場所には、過去七年の間に、三回も往復したのだから。

他人のことを笑える身分ではない。


※商山:商州商洛県(陝西省商県)の東の山。長安から南に向かう道の脇に位置する。

囂塵ごうじん:騒がしい俗世間。

※七年三往復:元和十年(815)長安から江州へ、元和十五年(820)江州から忠州へ、そして現在長安から杭州に向かっている。


○長慶二年(822)、長安から杭州へ向かう途次の作。

○白楽天自身、三回目の商山である。山頂から下の道を見ると、かなり人々が往来しているけれど、結局は自分もその道を歩く。なかなか世俗から逃れられない自分を笑っている。山頂から見た達観したような空の景色と、自分が逃れられない下界(世俗)を対比させたのだろうか。

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