第129話負冬日

負冬日


杲杲こうこう冬日出 照我屋南隅 負喧閉目坐 和氣生肌膚

初似飲醇醪じゅんろう 又如蟄者蘇 外融百骸暢 中適一念無

曠然こうぜん忘所在 心與虚空惧


冬の日を背に受けて


冬の太陽は、明々と昇り、我が家の南隅を照らしている。

背中に日差しの暖かさを受けて、目を閉じて座っていると、のんびりと穏やかな気分が肌に生じてくる。

最初のうちは、香り高い濁り酒を飲んだような気分。

少しずつ、冬ごもりしていた虫が生き返るような気分。

暖かさに包まれ、身体の外側から溶けて、骨という骨がほぐれてくる。

心の中も、安らかで、何の雑念もない。

広々とした世界が広がり、もはや、どこにいるのか、わからない。

心は虚空と一体になっている。


杲杲こうこう:明るい日の出のこと。

※負喧:「喧」は、日差しの暖かさ。それを背に負っている。

醇醪じゅんろう:香り高い濁り酒。

※蟄者:冬ごもりをする虫。

※百骸:身体のあらゆる骨。

曠然こうぜん:心が広々とすること。

※虚空:何も無い世界。仏教及び老荘思想にも見られる。


○元和十四年(819)、忠州の作。

○冬の暖かい日の、ひなたぼっこを楽しんでいる。

 ひなたぼっこで、これほど楽しめる人も、なかなか面白い。

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