第128話寄微之

寄微之

時微之爲虢州かくしゅう司馬


高天默默物茫茫 各有来由致損傷 鸚爲能言長翦翅 亀縁難死久搘牀

莫嫌冷落拋閑地 猶勝炎蒸臥瘴郷 外物竟闕身底事 謾拝門戟繋腰章


微之に寄せる。

(この時期、微之は虢州かくしゅうの司馬の任にあった)


天は完全に口を閉ざし、全ての物は茫漠として、よくわからない。

そして、それぞれが、こういう災いを受けるのは、理由がある。

口が達者な鸚鵡は、そのために永久に羽を切り取られ、長生きをする亀は、そのために久しくベッドの足とされてしまった。

ひっそりとした栄えない場所にすておかれたなどとは、嘆かないで欲しい。

私のように酷熱の毒気の多い土地で横になるよりは、まだいいではないか。

我が身にとって、外界など結局関係がない。

門に戟を立てて、印章を腰に下げるなど、恥ずかしいことなのだ。


虢州かくしゅう司馬:司馬は白楽天の誤解だったようだ。実際は長史(州の属官)

※鸚鵡と亀:その本性のために、不幸を招く例として掲げている。

※冷落:ひっそりと落ちぶれた様子。

※門戟:門に立てかけるほこ。


○元和十四年(819)、忠州の作。

○元稹と白楽天にとって、まだ不遇な時代が続いている時期。

○口は災いのもと、かつて政変時期に不用意な「正論」を述べ、互いに左遷の憂き目を被った、それを自虐的に詠んでいる。

白楽天は、新任地忠州の気候風土に馴染めず、体調が悪かったようだ。

「こんな体調を崩した自分よりはマシ」と、元稹を慰めている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る