第127話西楼夜

西楼夜


悄悄復悄悄 城隅陰林杪 山郭燈火稀 峡天星漢少

年光東流水 生計南枝鳥 月没江沈沈 西楼殊未暁


西楼の夜


ひっそりと まさにひっそりと

城壁の一隅は樹林になってしまった。

山間の町であり、燈火など、ほとんどない。

空は谷間に見えるけれど、天の河はほとんど見えない。

歳月が東に流れる川のように過ぎていく。

生まれたのは北方、それが南の枝に身を寄せ暮らす。

月は沈み江水は黒々と流れていく。

西楼の夜明けは、まだのようだ。


※西楼:忠州の町の西にあった楼閣。

※悄悄:ひっそりと静まり返った様子。

※林杪:木々のこずえ。

※星漢:天の河。

※沈沈:流れる川の水が黒々とした様子。


○元和十四年(819)、忠州の作。

○新任地中秋の夜は、山間部であり、暗いようだ。

 白楽天自身、全く馴染んでいない様子が、言葉にあらわれている。

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