第126話初入峡有感(2)

苒蒻ぜいじゃく竹篾ちくべつつな 欹危ききしゅうし師趾 一跌無完舟かんしゅう 吾生繁於此

常聞仗忠信 蛮貊ばんぱく可行矣 自古漂沈ひょうちん人 豈盡非君子

况吾時與命 蹇舛けんせん不足恃 常恐不才身 復作無名死


船を曳くのは、やわな竹皮の綱。

船乗りの足元も、ふらついている。

一歩踏み外せば、こんな船は跡形もない。

私の命は、そんな綱につながれている。

忠であり信であることを外さなければ、蛮族の国でも通用すると聞いてきた。

そうは言っても、古来の水没者に君子が含まれていないということはない。

そのうえ、私の時と運命を思い起こせば、常にとりとめがなく、あてにはならない。

本当にかつてから恐れていた。

この不出来な私の身など、無名のまま死を迎えるのではないかと。


竹篾ちくべつ:切りそろえた竹の皮。

欹危きき:あぶなげなさま。

しゅうし師:船乗り。

蹇舛けんせん:めぐり合わせが悪い、とりとめがない。


○元和十四年(819)、江州から忠州への途次の作。

○とにかく、危険な行程を本当に怖がっている。

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