第124話夜入瞿唐峡

夜入瞿唐峡くとうきょう


瞿唐天下険 夜上信難哉 岸似雙屏合 天如匹帛開

逆風驚浪きょうろう起 抜□闇船あんせん起 欲識愁多少 高於灎澦えんよたい


●□は竹かんむりに念:つなと読む。


夜に瞿唐峡くとうきょうに入る。


瞿唐峡くとうきょうは、天下の険。

夜に上るとなれば、困難なことだ。

両側の岸は、厳しくそそり立ち、一双の屏風が合わさるように見える。

天はそれに挟まれて、絹が敷かれたようだ。

大波は風に逆らってわき起こり、綱を引いて船が暗闇に近づいてくる。

憂いはどれほどかと思うと、立ちふさがる灎澦えんよたいを越えて、なお高い。


瞿唐峡くとうきょう:三峡の最も上流にして最大の危険な峡谷。

※抜□闇船あんせん起 :どこか見知らぬ船が、つなが外れて近づいてくる様子。

灎澦えんよたい瞿唐峡くとうきょうの入り口を塞ぐように立つ巨岩。


○元和十四年(819)、江州から忠州への途次の作。

○三峡を上り、最後の難関の瞿唐峡くとうきょうで詠んだ。

○両岸の岩により、川の流れも激しいく、夜に航行するには厳しいことになる。

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