第123話入峡次巴東

入峡次巴東ばとう


不知遠郡何時到 猶喜全家此去同 萬里王程三峡外 百年生計一舟中

巫山暮足霑花雨 隴水ろうすい春多逆浪風 两片紅旌こうせい数聲鼓 使君艛艓ろうちょう上巴東


三峡に入り、巴東ばとうに泊まった。


遥かに遠い郡に到着するのは、いつになるのだろうか。

それでもなお、この旅を一家そろって、ともにできるのは、うれしいことだ。

三峡の先まで、この万里の行程は続く。

一生が生きていけるかどうかは、この一艘の船に託している。

日暮れ時の巫山では、雨がしっかりと花を潤している。

悲しげな水音は隴水ろうすいに似て、春先は風が吹きつけ、波を逆巻いている。

赤い旗を二本なびかせ、何度も太鼓を打ち鳴らす。

刺史の船は、このようにして、巴東ばとうに上ってきた。


※入峡:江州から長江をのぼり、宜昌を経て三峡に入る。三峡は西陵峡、巫峡、瞿塘くとう峡。両側に山が迫る峡谷が約200キロ続く。

巴東ばとう:帰州(湖北省巴東県)。三峡の最も下流にある西陵峡を過ぎ、次の巫峡までの位置。

※遠都:忠州のこと。

※巫山:四川省巫山県の山。巫峡と瞿塘くとう峡の間。

隴水ろうすい:長安の渭水に流れ込む川。悲哀を催す川として、しばしば歌われる。

紅旌こうせい:刺史の身分を示す船。

艛艓ろうちょう:船上に館を構えた船。


○元和一四年(819)、江州から忠州までの途次の作。

○厳しく長い旅程が続いている。


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