第105話東南行(14)

時遭人指點してん  數被鬼揶揄  こつこつ兀都疑夢  昏昏半似愚

女驚朝不起  妻怪夜長吁  萬里拋朋侶  三年隔友于

自然悲聚散  不是恨栄枯  去夏微子瘧  今春席八殂


時々、世間から後ろ指を指されている。

鬼にも、時々あざけられる。

ぼんやりと全ては夢なのかと疑う。

暗きに沈み、半ば愚痴のようなものばかり。

娘は朝起きてこない父に驚き呆れ、妻は夜更けの長い溜息を怪しんでいる。

かつての朋友は万里の果てに、散らばってしまった。

兄弟たちとは三年も離れてしまった。

人の離合集散は当然悲しいけれど、我が身の盛衰は悲しくはない。

元稹は去年の夏に瘧の病を患い、今年の春には席八が亡くなった。


指點してん:指弾する。

※數被鬼揶揄:鬼にからかわれるほどの左遷の身になったことを恥じている。

こつこつ:ぼんやりとしているようす。

※都:「すべて」の意味。

※友于:兄弟の意味。

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