第103話東南行(12)

残芳悲鶗鴂ていけつ

(音啼決ていけつ 見楚詩そじ

暮節感茱萸しゅゆ  ずいひらく金英菊  花飄雪片蘆  波紅日斜没

沙白月平鋪  幾見林抽筍  頻驚燕引雛  歳華何條倏しゅっこつ

年少不須臾しゅゆ  眇默びょうもく思千古  蒼茫想八區はっく


花は崩れ落ち、モズが悲しげに鳴く。

(音はテイケツ、楚詩に見える)

重陽の節句には、茱萸しゅゆを眺め、心が揺れる。

黄金色の菊が花しべを開き、花が風に舞う姿は雪の一片にも似た白い蘆。

波は赤く染まり、日が沈んでいく。

林の筍が伸びてくるのを、何度目にしたことか。

燕が雛を引き連れる様子を、何度目を奪われたことか。

歳月というものは、本当に早く過ぎていく。

わずかに残る少壮の日々。

はるか遠い昔の日々を想い、果てしなく広がる世界に想いを深くする。



鶗鴂ていけつ:その鳴き声が草木を枯らすと言われている秋の鳥。モズ。

※暮節:重陽の節句。

茱萸しゅゆ:カワハジカミ。重陽の節句に髪飾りにして、魔除けにする。

ずいひらく金英菊:「金英菊」は黄色い菊の比喩。

※花飄雪片蘆:「雪片」は蘆の白い花の比喩。

※波紅:夕日を受けて水や波が紅に染まるという表現。

條倏しゅっこつ:時が速く過ぎ去ること。

※年少:青年の時期。

須臾しゅゆ:時間が短いこと。

眇默びょうもく:遥か遠いさま。

※八區:八方、天下など。

          

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