第102話東南行(11)

林対東西寺 山分大小姑

(東林・西林寺在廬山北、大姑、小姑在廬山南 彭蠡湖ほうれいこ中)

廬峯蓮刻削こくさく 湓浦ぼんぽ縈紆えいう

(蓮花峰在廬山北 湓水在江城南 何遜かそん詩云 湓城対湓水 湓水縈如帯)


九派呑青草

(潯陽江九派 南通青草 洞庭湖)

孤城覆緑蕪りょくぶ 

(南方城壁 多以草覆)

黄昏鐘寂寂 清暁角嗚嗚かくおお  春色辞門柳  秋声到井悟せいご


東西二つの寺が樹林の中に向かい合っている。

山は大小二つの姑山を分けている。

(東林寺と西林寺が廬山の北にあり、廬山の南、彭蠡湖の中には大姑山と小姑山がある)

廬山の蓮華峰、彫り痕が鋭い蓮華の花。

湓浦の水路は帯を広げ流れている。

(蓮華峰は廬山の北にあり、江州の南に湓水が流れている。何遜はその詩の中で歌っている。「湓城は湓水に向かいあい、湓水は帯のように曲がりくねる」)

水流は九つに分かれ、青草湖に飲み込まれ

(長江は潯陽で九つに分かれ、南は青草湖、洞庭湖につながっている)

ひっそりと建っている町の城壁は緑の草に覆われている。

(南国の城壁は草で覆われているものが多い)

黄昏時になると鐘が寂しげに鳴り、夜明けには角笛がむせび泣きをする。

城門の柳から、春景色が消え去り、井戸の悟桐の木には秋の気配が漂っている。


※山分大小姑:鄱陽湖中に立つ大姑山、小姑山を指す。

彭蠡湖ほうれいこ:鄱陽湖。

※湓浦:湓水が長江にそそぐ河口。船着き場。

※帯縈紆えいう:帯のように曲がりくねる。

何遜かそん詩:梁の詩人の詩。

角嗚嗚かくおお:「角」は角笛。こもった音色を表現している。



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