第101話東南行(10)

予自太子賛善大夫 出爲江州司馬


事情変寒暑  世利算錙銖ししゅ  即日辞双闕  明朝別九衢きゅうく

播遷はせん分郡國  次第出京都けいと


十年春 微之びし移佐通州 其年秋 予出佐潯陽

明年冬 杓直ひょうちょく出牧澧州 崔二十二出牧果州 韋大出牧開州


秦嶺馳三駅  商山上二邘にう

商山険道中 有東西二邘


峴陽けんよう寂寞せきばく  夏口路崎嶇きく  大道全生棘  中丁盡執殳

江関未徹警  淮寇わいこう尚稽誅



私は太子賛善大夫から、朝廷を出て、江州司馬となった。

人の心は、まるで夏から冬というように、ガラリと変化した。

世間の人々は、ほんの細かな損得の算段に徹するのみ。

左遷当日に、宮の門を辞した。

そして明朝には、長安を出た。

仲間も、それぞれ、地方に左遷され、一人また一人と都から去っていった、

元和十年の春、元稹は通州の属官へ移った。

その年の秋、私は江州の属官となった。

明くる年の冬、李建は都を出て澧州刺史となった。

崔韶は出て果州の刺史、韋処厚は出て関州の刺史となった。


三つの宿場がある秦嶺を過ぎ、商山に至り東邘と西邘に登った。

商山は道が険しく、東西二つの邘山がある。

峴山の南、堕涙碑が立っている亭には、人気がない。

夏口では、水路が交錯している。

街道の路全てにイバラだらけで、壮年の男は盡く兵隊にとられていた。

川の関所の警備はそのまま、淮西の乱の鎮圧はまだ終わっていなかった。


※世利算錙銖ししゅ:世間は全て打算で動き、白楽天は得にならないので、結局見捨てられてしまった。

二邘にう:商山に上がる途中にあった二つの集落。

峴陽けんよう寂寞せきばく:峴山(湖北省)の南に、かつてその地を治めた晋の羊祜を偲んで石碑が建てられていた。

崎嶇きく:路が険しいこと。

※中丁:壮年の男。

※執殳:兵隊にとられること。

淮寇わいこう:淮西の呉元済の反乱。

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