第100話東南行(9)

入視中枢草  歸乗内厩だいきゅう駒  酔曽衝宰相  驕不揖金吾

日近恩雖重  雲高勢却孤  翻心落霄漢しょうかん  失脚到泥塗

博望移門籍  潯陽佐郡府


朝廷に入った後は、政治の枢軸である文章の起草の仕事をした。

朝廷から帰る時には、馬寮の宮馬を使った。

宰相には、酒の勢いで文句を言い、衛士には、驕り高ぶり挨拶もしなかった。

天子直属の身分で、それは厚い御恩を賜ったと雖も、その高い地位ゆえ、周囲からは孤立した。

結局我が身は一変、天の高みから落ち、遂に失脚、泥にまみれた身となった。

太子の博望苑から配置転換、潯陽にて州刺史の配下になったのである。


※中枢:朝廷の中心。

※視草:天子の詔勅を起草する。

内厩だいきゅう:朝廷の馬屋。

※金吾:宮中の警護をする官名。

※日近:天子の側近。

霄漢しょうかん:天の河。

※博望苑:漢の武帝が戻太子のためにつくった苑の名前。白楽天は左遷の前に、太子左賛善大夫の任についていた。

※潯陽:左遷された江州の治所。

※佐郡府:「郡府」は郡の太守の印。江州の刺史を指す、「佐」はその属官。


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