第95話東南行(4)

自念鹹秦客 嘗為鄒魯すうろ儒 蘊藏うんぞう經國術 輕棄度關繻

賦力淩鸚鵡おうむ 詞鋒敵轆轤ろくろ 戰文重掉鞅しゃくおう 射策一彎弧



昔を思い出せば、都に出てきて、孔孟の学を習得した。

国家経営の策を胸に秘め、国には二度と戻らないと決め、関所の手形は投げ捨ててしまった。

賦の技術はかつての禰衡ていこうの「鸚鵡おうむの賦」を凌ぎ、筆先鋭く轆轤ろくろの名剣にも負けない。

文を書けば、軽いものだ。

科挙の試験は続けて合格、弓を引けば一度で策を見事に命中させた。



※鹹秦:秦の都咸陽(長安)。

鄒魯すうろ:鄒は孟子の生地、魯は孔子の生地。合わせて儒学を意味する。

蘊藏うんぞう:胸に秘める。

※賦力淩鸚鵡おうむ:後漢の禰衡ていこう鸚鵡おうむを献呈された席で、それを賦にすることを求められ、一気呵成に美麗な賦を書き上げた故事。

※詞鋒敵轆轤ろくろ:詞鋒は表現の鋭さ。それが轆轤ろくろという名剣に匹敵するという自負を語る。

※戰文重掉鞅:「戰文」は詩文を競い合う科挙の試験。「重」は礼部の進士科と吏部の書判抜萃科に連続して応じたことを指す。

掉鞅しゃくおう:余裕を示す表現。

※射策:漢代の官吏試験の方法。問題を「策」(竹の札)に書いて裏返しにして、受験者が選んで回答する。

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