第96話東南行(5)

崔杜さいと鞭齊下 元韋げんいたずな並驅 名聲逼楊馬ようば 交分過蕭朱しょうしゅ

世務輕摩揣まし 周行ひそか覬覦きゆ 風雲皆會合 雨露各沾濡てんじゅ

共遇昇平代 偏慚固陋ころう軀 承明連夜直 建禮払晨ふっしんはしる



崔韶さいしょう杜元穎とげんえいとは馬へあてる鞭も斉しく、元稹と韋処厚とは手綱を並べて一緒に駆け抜けた。

私たちの文における名前は、揚雄や司馬相如に迫り、深い交友は蕭育しょういくや朱博の上を行く。

役所の仕事には、常にしっかりと励み、心中密かに、高位の官位を望んでいた。

竜虎が風雲に会するとでも言えるような素晴らしい出会いもあり、雨露のような多大なる恩沢にも、一緒に浴した。

全員がこんな泰平の世に出会った。

それでも、私一人の頑固さは恥ずかしかった。

承明廬しょうめいろで連日の宿直をして、晨明しんめいになれば建礼門院に駆けつける日々だった。


崔韶さいしょう杜元穎とげんえい、元稹と韋処厚:長安時代の同僚にして友人。

※揚雄、司馬相如:漢時代の辞賦の大家。

蕭育しょういくや朱博:深い交友で知られ、一方が官につけば、もう一方を推薦すると言われていた。

※輕:常に。

摩揣まし:熟慮して判断する。

※周行:周の爵位。高い官職を望むこと。

覬覦きゆ:分不相応な願望を抱くこと。

※風雲皆會合:龍虎が風雲に乗じて天を翔けるように、才能がある人が良き時代と良き君主に出会うこと。

※雨露:天子からの恩沢。

承明廬しょうめいろ:漢の宮殿。承明殿の隣にあり、侍臣が宿直する建物。

※建禮払晨ふっしんはしる:建礼門は漢の宮門名。尚書郎がその門内に詰めた。夜明けとともに朝廷での勤務が始まったことを言う。


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