第85話聞早鶯

聞早鶯


日出眠未起  屋頭聞早鶯  忽如上林暁  萬年枝上鳴

億爲近臣時  秉筆直承明  春深視草暇  旦暮聞此聲

今聞在何處  寂寞潯陽城  鳥聲信如一  分別在人情

不作天涯意  豈殊禁中聽


鶯の初音を聞く


日が高くなってもまだ眠い。

まだ起きずにいると

屋根の上から鶯の初音が聞こえてきた。

まるで上林苑の夜明けのようだ。

中書省の万年樹の上で鳴いているような思いに浸る。

筆を手に取り、承明に宿直し、天子のおそばに仕えていた時期を思い出す。

春が深まると、天子の詔勅を考える合間に、朝にも暮れにも、この鳴き声を聞いたものだ。

今、その鳴き声をどこで聞いているのか。

ここは、寂しい潯陽の町。

鳥の声は同じ。

その違いは、鳴き声を聞く人の心だ。

天の果てに流されたことを考えなければ

禁中で聞く鳴き声と、まるで同じなのに。


※日出眠未起:日が高くなって起きないのは、白楽天は流罪の身であり、官僚としての仕事がないため。

※上林苑:漢の御苑、唐の宮苑を指す。



○元和十二年(817)、江州の作。

○鶯の初音を聞き、今はやっと起きる状態。かつては天子の詔勅を起草する合間に聞いた。その落差を感じ、今更ながら寂寥感に包まれる。





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