第81話琵琶引(6)

 我聞琵琶已歎息  又聞此語重喞喞  同是天涯淪落人  相逢何必曾相識  

 我從去年辭帝京  謫居臥病潯陽じんよう城  潯陽小處無音樂  終歳不聞絲竹聲  

 住近湓江ぼんこう地低濕  黄蘆苦竹遶宅生  其閒旦暮聞何物  杜鵑啼血猿哀鳴


琵琶を聞き深い想いに浸っていた私は、彼女の話を聞き、ますます想いが深くなる。

天の果てまで流れてきた身としては、同じではないか。

帝都では面識はなかったけれど、今、こうしてめぐりあっている。

「この私は、昨年、帝都を離れてきました。今は潯陽の町まで流され、病に伏しております」

「この潯陽じんようの町は、まさに辺境の地で、音楽の楽しみなどは全くありません」

「管弦の音を聞くなど、一年を通して何もありません」

湓江ぼんこうの近くに家があるのですが、土地も低く湿気が多い」

「アシも黄ばんでいて苦竹が、我が家を囲んでいます」

「我が家のあたりで朝晩耳に聞こえるものと言えば、ホトトギスの血を吐くような声と、哀しいとしか聞けない猿の声しかありません」


※喞喞:深いため息の音。

※淪落:落ちぶれること。



○辺境の地で思いがけず帝都の音楽を聞き、琵琶の弾き手の半生を知り、また自らの落ちぶれた境遇や住まいを語る。

○共に帝都から流れてきた者として、哀感と帝都への想いはさらに深まる。

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