第80話琵琶引(5)

 今年歡笑復明年  秋月春風等閒度  弟走從軍阿姨死  暮去朝來顔色故  

 門前冷落鞍馬稀  老大嫁作商人婦  商人重利輕別離  前月浮粱買茶去  

 去來江口守空船  遶船明月江水寒  夜深忽夢少年事  夢啼粧涙紅闌干


来る年も、またその次の年も、楽しく過ごしました。

秋の月を愛で、春の風を喜び、幸せに包まれて過ごしました。

しかし、弟は徴兵となり、世話をしてくれたおかみさんは亡くなりました。

その後はただ毎日を何事もなく過ごすのみ、私の容色もしだいに衰えてしまいました。

門前は寂れ、客の訪れも、まばらになりました。

私も歳を重ねたので、ある商人の嫁となったのです。

ただ、商人というのは、利を求めるためには別居など当たり前です。

最近でも、先月に浮粱まで、茶の買い出しに出かけ、そのままです。

彼が出かけた後は、川の辺りの船で、お留守番をするしかありません。

船の上には月が浮かび、水面は冷たいままです。

夜も深くなると、思い出すのは、若い時の日々。

夢の中で流した涙は、紅混じり、あふれ出すのです。



※阿姨:所属する妓女の館のおかみさん

浮粱ふりょう:茶の名産地。江西省景徳鎮市。



○楽しく過ごしていたけれど、弟は徴兵され生死は不明、妓女の館のおかみさんも死んだ。客も少なくなり、自らの容色も衰えたので商人の嫁になった。

○しかし、商人は買い付けと称し、あちこちへ旅をして不在がち。

○そんな寂しい生活の中で、思い出すのは若い時の楽しい日々。

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