第77話琵琶引(2)

 轉軸撥絃三兩聲  未成曲調先有情  絃絃掩抑聲聲思  似訴平生不得意  

 低眉信手續續彈  説盡心中無限事  輕攏慢撚抹復挑  初爲霓裳後緑腰  

 大絃嘈嘈如急雨  小絃切切如私語  嘈嘈切切錯雜彈  大珠小珠落玉盤

   


琵琶を弾く者は、糸を締め絃をつま弾き、二音、三音鳴らす。

まだ曲が始まらないのに、その音色には情感があふれている。

一絃一絃、低く抑え、一音一音、思いをこめる。

やるせない日頃の思いをあらわすかのようだ。

うつむき加減に指のおもむくままに次々とつま弾き、心に浮かぶ限りないことを、歌い上げる。

絃を軽く抑えゆるやかにひねり、そしてまた絃をつまみ、弾きあげる。

最初は霓裳の曲、続いて緑腰の曲。

太い絃は豪雨のように激しく、細い弦はささやき声のようにやわらかだ。

その激しい音と、やわらかな音が入り混じる音は、大小の真珠が玉の大皿にこぼれ落ちるかのようだ。


※転軸:「軸」はペグ(転手、糸巻)。ペグを巻いて絃の張りを調整する。

※撥絃:バチで絃を弾く。

※掩抑:音を低く抑える。試し弾きの段階。

※低眉:下を向くこと。

※信手:手の動きにまかせる。

※霓裳の曲、緑腰の曲:唐代の宮中等で愛された曲。

※大絃:太い絃、低音の絃。

※嘈嘈:大きな音。

※小絃:細い弦、高温の絃。

※切切:小さな音。

※錯雜:入り混じること。

※大珠小珠:珠は真珠。大きな真珠と小さな真珠のこと。

※玉盤:玉でできた盤。


○白楽天による琵琶演奏の描写。

○音楽評論家的に、しっかりと見ている。

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