第68話初到江州

初到江州


潯陽じんよう欲到思無窮 庾亮楼ゆりょうろう溢口ぼんこう


樹木凋疏ちょうそ山雨後 人家底湿水煙中


菰蔣こしょう餧馬行無力 蘆荻ろてき編房臥有風


遥見朱輪来郭出 相迎労働使君公



江州に到着したばかり。


潯陽じんようが近づいてきた。

様々な想いが果てしなく胸にあふれている。

その地は、庾亮楼ゆりょうろうの南、溢口ぼんこう東。

山に降っていた雨がやみ、すでに葉が落ちた木が少しだけ並んでいる。

馬の餌は真菰、馬の口には合わないのか、足取りが重い。

アシ葺きの屋根の家が見えるけれど、あれでは寝ていても風が吹き込むだろう。

遠くから、城郭を出る朱塗りの車が向かってくるのが見える。

おそらく、わざわざご苦労にも、お出迎えの太守様なのだと思う。


※初到:到着直後

潯陽じんよう:江州の州治。現在の江西省九江市。

溢口ぼんこう:長江の入江、船着き場

凋疏ちょうそ:枯れてまばら

菰蔣こしょう:真菰などの水辺の草。

蘆荻ろてき:アシとオギ

※労働:世話をかける。

※使君公:州刺史に対する敬称


○元和十年(815)、江州到着直後の作。

○見知らぬ異郷の地に対して、どことなく落胆の思いが文中に見られる。

○司馬という政治犯の肩書で左遷された自分に対して、その地の長官が城を出てまでして、出迎えしてくれたことに、感謝の意を述べている。

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