第67話讃李杜詩集 因題巻後

讃李杜詩集 因題巻後


翰林江左日  員外剣南時  不得高官職  仍逢苦乱離


暮念逋客恨  浮世議仙悲  吟詠流千古  聲名動四夷


文場供秀句  楽府侍新辞  天意君須会  人聞要好詩


(賀監知章目白為謫仙人)


李白と杜甫の詩集を読み、巻末に書きつける。


翰林供奉かんりんきょうほうであった李白が江州をさまよいあるいた日々。

工部員外郎であった杜甫が剣南に仮住まいをした時。

両方とも、高い官職を得ることはできず、そのうえ、混乱の時代に苦しんでいた。

老年になっても都に戻ることができなかった杜甫の苦しみ。

下界に追放されたままの仙人李白の悲しみ。

しかし、その詩は千年を過ぎても、人々に愛され、

その名声は周辺の蛮国まで、知れ渡っている。

かれらは、文学という世界に素晴らしい詩を捧げ、楽府においては新鮮な言葉を待ち焦がれていた。

これは、天からの意思であることを、あなた方は理解するべきなのだ。

人間の世には、すぐれた詩が必要であることを。


(秘書監の賀知章、李白を仙界から追放された仙人とみなしていた)



翰林かんりん:天宝元年(742)玄宗皇帝が新設した翰林院に李白が供奉ききょうほう(宴席で詩筆を揮う仕事)したことを表現する。政治的には中枢から外れている。

※江左:江東、長江下流地域。朝廷から追放された李白が放浪生活を送った地域。

※員外:成都滞在中の広得二年(764)検校工部員外郎となった杜甫を示す。

※議仙:李白のこと

※文場:文壇


〇元和十年(815)、長安から江州への旅路での作。

〇白楽天は、李白、杜甫を唐代最高の詩人として評価し、積極的にその評価を広めた。

〇我が日本における李白、杜甫の詩が伝わった要因の一つに、白楽天による評価を抜きにしては考えられない。


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