第53話秦中吟其三 傷宅
誰家起甲第 朱門大道邊 豐屋中櫛比 高牆外回環
累累六七堂 棟宇相連延 一堂費百萬 鬱鬱起青煙
洞房溫且清 寒暑不能幹 高堂虛且迥 坐臥見南山
繞廊紫藤架 夾砌紅藥欄 攀枝摘櫻桃 帶花移牡丹
主人此中坐 十載為大官 廚有臭敗肉 庫有貫朽錢
誰能將我語 問爾骨肉間 豈無窮賤者 忍不救饑寒
如何奉一身 直欲保千年 不見馬家宅 今作奉誠園
さて、どなたのお屋敷なのでしょうか。
大通りに面して、朱塗りの門を立てているお屋敷があります。
まるで櫛のように 立派な屋根が隙間なく並んで 垣根を高くして外を囲んでいます。
堂屋は累々と六棟も七棟も連なり 延々と甍が続いています。
この一つの堂屋だけで、百万かかります。
まさに青い靄が立ち込めるという言葉通りです。
寒さも暑さも入ってこられないような 暖かで清々とした寝室があります。
広々として見晴らしが素晴らしい高殿からは 終南山が座っていても寝ていても眺められます。
その廊下には 藤棚が取り巻き 芍薬の植え込みが みぎりを挟みます。
桜桃の実は 枝をたぐり寄せるだけで摘むことができ 牡丹は花をつけたまま移し替えられます。
さて、このお屋敷のご主人は、高位の官職を得て、すでに十年。
その厨房には食べ切れなくて腐るほどの肉があり、倉庫の中には銭差しも壊れるほどの金がうなっています。
さて、なんとかして、この私の言葉を取り次いで、あなたの身内に私の話を伝えるお方はおりませんか。
貧乏の極みに陥る民もおりますよ、餓えや寒さに難儀する人をお救いしないでいられるのですかと。
何故、自分だけを大事にして、千年の長寿をそれほど願うのですか。
あの
今は奉誠園となっていることを ご存知ないのですか。
※甲第:豪邸
※青靄:青いもや。建物が高くそびえるという表現。
※虛且迥:広々として(ガランとして)見晴らしがよい。
※紅薬:芍薬
※
○富貴の者が、弱者救済をするべきだという批判。
○白楽天は、故事をもとに、現在を批判する。
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