第46話新楽府其三十二 賣炭翁
苦宮市也
賣炭翁
伐薪燒炭南山中 滿面塵灰煙火色
兩鬢蒼蒼十指黑 賣炭得錢何所營
身上衣裳口中食 可憐身上衣正單
心憂炭賤願天寒 夜來城外一尺雪
曉駕炭車輾氷轍 牛困人飢日已高
市南門外泥中歇
翩翩兩騎來是誰 黄衣使者白衫兒
手把文書口稱敕 迴車叱牛牽向北
一車炭重千餘斤 宮使驅將惜不得
半匹紅綃一丈綾 繋向牛頭充炭直
宮廷相手の商売に苦しむこと
炭を売る翁が現れた。
終南山の奥深く 薪を切り出しそれを焼いてきた。
煤だらけ 埃だらけ 灰まみれの顔になり
髪はごま塩 十本の指など 真っ黒だ。
この炭を売り 翁は何を得るのか。
身に着ける着物と 口に入れる食べ物だ。
見るからにかわいそうだ。
単衣の薄物を着るしかない、この翁。
炭は安い それが気になる。
もっと寒くならなければ 炭など売れない、はやく寒さが厳しくならないものか。
それでも夕べから街の外に 一尺ほど雪は積もった。
そして まだ夜も明けないうちに 炭を積んだ車を 氷の張る道を進ませてきた。
車を引く牛は苦し気な声をあげ 人は腹が減り すでに日は高い。
それでも ようやく雪解けのぬかるみで 一休みをする。
そこに二頭の馬が 勢いよく 馳せつけた。
これは いったい何者か。
見れば黄色の衣の使者と 白い衣の子供。
文書を手にして 勅命だと居丈高に読み上げる。
炭車の向きを無理やり変えさせ 牛にむち打ち 北へと向かわせる。
その炭車に積んだ炭は かなりな重さ 軽く千斤を超えるだろう。
官吏に無理やり追い立てられ まあ憎らしく仕方がない。
そんなに取られて 赤い絹地半匹だ。
牛の頭の掛けられたのが、この炭千斤の代金だ。
※宮市:宮廷が購入するという「名目」で宦官が民間から超安価で購入。 それを高値で横流し、利ザヤは宮中の歳費が建て前、実質は宦官の横領着服。
白居易が官僚になった時点では、一旦廃止されていたが、憲宗皇帝時には復活していたらしい。
※南山:長安の南方の終南山
※黄衣:宦官の服
※白衫兒:平民の服を着たお供の少年
※迴車叱牛牽向北:長安の都は、市場が南、宮廷は北。広い長安城を南から北へ車ごと「連行」されていく。
※重千余斤:車に積んだ炭が重い様子。一斤は六百グラム、千斤で六百キロ。
〇貧しい炭売りの翁が、苦労して炭を焼き、都に運んだものの、宦官に安く買いたたかれ、難儀する様子、哀れな様子を描写している。
〇単純に宮殿の宦官を中心とした悪事を暴くだけではなく、それに従わなければならない哀れな炭売り翁を主人公にした形での非難を行っている。
※宦官制度は、世界中にあるけれど、我が日本だけは成立した歴史はないとのこと。
尚、宦官からは、独特の悪臭がするらしい。
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