第32話新楽府 其一 七徳舞(2)
亡卒遺骸散帛收
貞観初 詔天下陣死骸骨 致祭瘞埋之 尋又散帛以求之也
饑人賣子分金贖
貞観二年 大飢 人有鬻男女者 詔出御府金帛琴盡贖之 還其父母
魏徵夢見天子泣
魏徵疾亟 太宗夢與徴別 既痦流涕 是夕徴卒 是御親制碑云
昔殷宗得良粥 於夢中 今朕失賢臣於覚後
張謹哀聞辰日哭
張公謹卒 太宗為之擧哀 有司奏日 在辰 陰陽所忌 上日 君臣義重
父子之情也 情發於中 安知辰日 遂哭之
怨女三千放出宮
太宗常請侍臣日 婦人幽閉深宮 情實可慇 今將出之 任求伉儷
於是令左丞載冑 給事中杜正倫於掖庭宮西門 揀出数千人 盡放帰
戦死した兵士の遺体は金に糸目をつけずに求められます。
(貞観の初めての年、天子は天下に詔を出し、戦死者の遺体を収集し、その霊を厚く祀った上で埋葬し、そのうえさらに金銭などは度外視して遺体を捜し求めさせるのです)
食べるものに困り、親から売り飛ばされた子供は金銭を払い、買い戻されます。
(貞観二年に大飢饉が発生、食べるものに困り我が子を売り飛ばす親がいました。天子は詔を出し、宮中の蔵から惜しみなく金銭を出して、哀れな子供たちを全て買い取り、両親の元に返したのです)
魏徵が夢枕に立つのを見て、天子は涙をこぼされます。
(魏徵の病気は深く進み、天子は夢の中で魏徵とお別れをします。天子はその後目覚め涙にむせびますが、確かに夢の通り、その日の晩に魏徵はこの世を去ることになりました。天子は深く感じ、自ら魏徵の碑文をお書きになります。
「その昔殷の王は夢の中で、良き家臣を得たけれど、今朕は夢から覚めて、この賢い家臣を失うことになった」)
張公謹が亡くなったとの知らせを聞き、本来は哭いてはならない辰の日などは度外視、慟哭をされるのです。
(張公謹が亡くなると、太宗は彼のために哭されます。家臣が「辰の日は陰陽の忌みの定めにより哭してはなりません」と奏上を行いますが、太宗は「君臣の間の信義は本当に重いものがある。それは父と子の情のようなものだ。その情というものは、心の中から発するもの、辰の日の定めなどは関係するものではない」と答え、ますます彼のために慟哭されるのです)
哀れな三千人の宮女を後宮から解放します。
(太宗は常日頃、家臣に話しておりました。
「宮中の奥深く、後宮に閉じ込められている女性たちの愁いは、本当に憐れむべきことである。すぐに解放し、良き配偶者を求めさせるにしよう」
そこで、左丞の載冑と給事中の杜正倫に命じ、脇の宮殿の西門に数千人の宮女を選び出し、全員を解放の後、それぞれの家に帰らせたのです)
※帛:「きぬ」金銭と同様の価値を持つ。
※魏徵:唐初代の重臣
※張公謹:襄州都督
※怨女:後宮に住む宮女
※掖庭宮:脇の宮殿、宮女の住む場所
○李世民(太宗皇帝)は、天下を平定し、類まれなる「情け」で、戦死者を金に糸目をつけずに探し、丁寧に弔い埋葬、また大飢饉の発生で食べ物にも困った親から売り飛ばされた罪のない子供たちに涙し、宮殿の金庫から金を出して、買い戻し親の元に返す。
また重臣の死去には、心から泣き、自由を奪われ哀れな後宮の女を解放、それぞれの親の元に戻す。
○白楽天にとって、これこそ理想の政治、それを歌い上げている。
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