第13話長恨歌(4)

驪宮高処入青雲  仙楽風飄処処聞

緩歌慢舞凝糸竹  尽日君王看不足

漁陽鞞鼓動地来  驚破霓裳羽衣曲

九重城闕煙塵生  千乗万騎西南行



驪山りざんの高く贅を尽くした宮殿は 青雲にも届くほどになり


仙界と思われるほどの妙なる楽の音は 薫風に舞いあちらこちらに届きます。


ゆるやかな歌 のびやかな舞 情をたたえた糸竹の音


飽きることなど何もなく 天子は日々 楊貴妃を侍らせ この上ない悦楽にひたるのです。


そこに突然 漁陽の進軍の楽が大音声で轟き 甘美な天子の楽を打ち消しました。


そして九重の宮殿の門は 業火に襲われ 黒煙を巻き上げています。


天子とその一行は これにはもはや 何も抗すことが出来ません。

千の馬車と万の騎兵に守られ 西南の蜀をめざし、帝都を後に落ちのびることになりました。



驪宮りきゅう:驪山の山懐に点在した華清宮。

※漁陽の軍楽:漁陽(天津)の地の軍楽。

 安禄山の軍が帝都に攻め入った状況を、勇ましく剛健な音楽が、天子の優美な音楽を駆逐するとして表現する。

 尚、安禄山の本拠地は范陽(北京付近)であるけれど、近隣の漁陽としたのは、後漢の鼓の名手が曹操の前で奏した漁陽にちなんだ曲に掛けたもの。



○歓楽を尽くした華清宮での日々は、人民の不満を集めた安禄山の乱により一転、天子一行は、帝都から都落ちすることになる。











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