第9話三月三十日題慈恩寺
三月三十日 題慈恩寺
慈恩春色今朝尽 尽日徘徊倚寺門
惆悵春帰留不得 紫藤花下漸黄昏
慈恩寺の春の景色は 今日が終りとなる。
丸一日 ゆっくりと楽しみ 今 寺の門に我が身を預ける。
寂しい限りだ
去りゆく春を 引き止めることは できない。
紫の藤は咲き乱れ
夕闇が 少しずつ 深くなる。
○永貞元年(805)長安の作。
「三月三十日」は、暦上の春の終日。
暦上の春の終わりの日に、慈恩寺を訪れ、「春の終わり」を情感を込めて詠み上げている。
※慈恩寺
長安の東南にある寺院。名所として様々な詩に詠まれている。
大雁塔も有名。
※慈恩寺大雁塔
唐の時代の高僧、玄奘三蔵がインドから持ち帰った仏教の経典や 仏像などを保存するために、当時から大寺院であった慈恩寺に建てた塔。
玄奘三蔵自身も、この大雁塔の設計に参加している。
その後、インドから持ち帰った経典の翻訳を、没する664年の直前まで続けたと言われてる。
尚、わが日本の僧侶道昭(奈良薬師寺)は玄奘三蔵に師事していたので、おそらくこの慈恩寺で修行したと言われている。
その奈良薬師寺には、玄奘三蔵院伽藍があり、平山郁夫画伯作の玄奘三蔵求法の旅をたどる「大唐西域壁画」が、飾られている。
玄奘三蔵、我が日本の僧侶道昭、白楽天、様々なつながりに興味深いものがある。
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