第2話王昭君二首 その一

満面胡沙満鬢風 眉銷殘黛瞼銷紅 

愁苦辛勤顦顇盡 如今卻似畫圖中



その美しい顔には 辺境の砂嵐が叩きつけ


艷やかな髪は  既に砂まみれとなってしまった。


崩れたままの眉墨ですら その眉には残らず


紅も その頬からは見えない。


悲しみと辛さで 見る陰もなくやつれ


なんという皮肉だろうか


かつてわざと描かせた醜い姿絵そのものではないか。



○貞元四年(781)の作

 詠んだ場所は不明。


※王昭君の物語(概略)

 漢の元帝の時代、王昭君という後宮の女がいた。

 元帝の後宮では、宮女が多すぎ、全員は接見できないことから、絵師に似顔絵をそれぞれ描かせ、元帝はその似顔絵で夜伽を選んだ。

 宮女たちは、賄賂を絵師に送ってまで自分の姿を美麗に描かせたけれど、王昭君だけは夜伽を避けるために、わざと醜く描かせたようだ。

 さて、当時、漢を強く攻めていた匈奴の王が、漢との縁戚関係を強く求めたことから、王昭君を含む五人の後宮の女が差し出されることになった。

 元帝は、似顔絵の醜さから、かつては王昭君に接見することはなかったので、出発に際して初めて王昭君の美しさを目の当たりにし、相当残念がったものの、既にどうにもならなかった。


さて、匈奴の国に差し出された王昭君は、匈奴の王に嫁いだものの、その王が死んでしまった。

その後は、王の先妻の子が匈奴の国王を嗣ぐことになり、王昭君は先妻の子との結婚を求められてしまった。

王昭君は、帰国の願いもかなわず、やむなく匈奴の皇后となったという。

 

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