第40話 ベヒシュタインの音色 2

 これを書くに当たって、どんな音の例えをあげれば読んでくださる人にわかりやすいか考えていたのです。


 先に鍵盤ハーモニカの例をあげましたが、他にオルゴールとか仏壇においてある鈴(チーン)とか…。


 誰が聴いても美しいと思える音なのかということについて考え、説明したいと思っていました。


 そんなことをいろいろ考えていたら、フッとリコーダー(縦笛)ならベヒシュタインの音色を説明できると気が付きました。


 気が付いた途端ベヒシュタインの音の美しさに気がついたのですよ。


 遅すぎですが、頭の中にはベヒシュタインの音とリュビモフさんの演奏はしっかりと記憶されています。



 普通リコーダーといえば小学校で習うプラスチックのリコーダーが一般的です。


 音も簡単に出るし吹きやすいものです。


 誰もが想像しやすくイメージが湧きやすい音ですよね。


 リコーダー好きの私は19才の時に木で作られたリコーダーを買いました。(木のリコーダーは値段が高いです。)


 その音はプラスチックのリコーダーの音に比べて木が持つ素朴さが音に現れる感じです。


 素朴で柔らかく、音楽を奏でると様々な表情の音が聴こえその奥深さに驚き感動するのです。


 あるときは鳥のさえずりに、あるときは風のささやきに、コロコロとした丸いイメージの音だったり、サバサバとした乾いた音だったり隣の音にいく時と離れた音にいく時の微妙なニュアンスの差が心地好く…


 ああ、この感動をベヒシュタインの音に皆は感じて美しいと言うのだと、そう思いました。


 やはりベヒシュタインの音は美しかったのだと思えた自分がすごく嬉しくて、ちょっとニヤニヤとしていますよ。


 リュビモフさんは最後にアンコールでモーツァルトを弾いてくださいました。


 そのモーツァルトがその日一番の演奏だと思ったのは、きっとベヒシュタインの魅力がリュビモフさんによって最大限に引き出されたのを感じたからかもしれません。


 その音は柔らかく暖かくコロコロと流れ、細やかに軽やかに、時にはポーンとふっくらと跳ね上がり、細部まで美しく表情豊かに響き、ベヒシュタインを理解されているリュビモフさんの演奏は繊細で誠実で確かなモーツァルトでした。



                続く



 

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