15 ???
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はぐれ羊 はぐれ羊 深い森のはぐれた羊 やせっぽちの哀れな羊 湖の底で草を食む
「――君はどうして泣いているの?」
声がした。なだめるような優しい声が。
――お姉ちゃん……?
「違うよ。私の名前は雪奈」
そう言ってその人は朗らかに笑った。
幼い僕の隣に、その人が体育座りで腰を下ろした。
――ぼくは気持ち悪いんだって。だからみんなぼくのことがきらなんだ。
「そんなことないよ。だって君はこんなにも綺麗な目をしているのだもの」
その人が指先でそっと僕の頬を伝う涙を拭った。
――ゆきな、さんは、だれ?
「私は、そうね……これから先、君と出会う人。君を好きになる人。君が好きになる人。そして、私を救ってくれる人」
――すくう、ってどうやってするの?
「私のことを真剣に考えてくれて、私の気持ち悪い所もちゃんと向き合ってくれて、それまでの私を殺してくれるってことだよ」
――でも、コロしちゃったら、すくえないよ。
すると、その人は穏やかな表情で首を横に振った。
「そうだね。でも大丈夫、君が私を見つけてくれる頃にはその意味が分かるから。だからそれまで頑張って生きていてね。そしたら私からもご褒美をあげるから」
そう言って、その人は僕の頭を愛しく撫でた。
安らぎが、僕の渇いた心の泉を潤していった。その温もりに僕の意識はぼんやりと遠のき、やがて静かに眠りへ落ちていった……。
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