15 ???


 ▽ ▽ ▽


 はぐれ羊 はぐれ羊 深い森のはぐれた羊 やせっぽちの哀れな羊 湖の底で草を食む


「――君はどうして泣いているの?」

 声がした。なだめるような優しい声が。

 ――お姉ちゃん……?

「違うよ。私の名前は雪奈」

 そう言ってその人は朗らかに笑った。

 幼い僕の隣に、その人が体育座りで腰を下ろした。

 ――ぼくは気持ち悪いんだって。だからみんなぼくのことがきらなんだ。

「そんなことないよ。だって君はこんなにも綺麗な目をしているのだもの」

 その人が指先でそっと僕の頬を伝う涙を拭った。

 ――ゆきな、さんは、だれ?

「私は、そうね……これから先、君と出会う人。君を好きになる人。君が好きになる人。そして、私を救ってくれる人」

 ――すくう、ってどうやってするの?

「私のことを真剣に考えてくれて、私の気持ち悪い所もちゃんと向き合ってくれて、それまでの私を殺してくれるってことだよ」

 ――でも、コロしちゃったら、すくえないよ。

 すると、その人は穏やかな表情で首を横に振った。

「そうだね。でも大丈夫、君が私を見つけてくれる頃にはその意味が分かるから。だからそれまで頑張って生きていてね。そしたら私からもご褒美をあげるから」

 そう言って、その人は僕の頭を愛しく撫でた。

 安らぎが、僕の渇いた心の泉を潤していった。その温もりに僕の意識はぼんやりと遠のき、やがて静かに眠りへ落ちていった……。


▽ ▽ ▽








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