2篇:荒野、彷徨う・後編
「はぁぁ~?なンだ、このガキは?」
殃餓共は、狩りに夢中だった様子で、少女の接近に気付いていなかった。
旧世紀からの伝統的なアウトサイダー、パンクロックスタイルの格好をした殃餓。
三人の服装に統一感はないが、それが
顔には、ペインティングが為されている。
ペインティングは、都合がいい。
汚染された荒野で生きる彼らに皮膚疾患や
赤、青、黄、白、黒。
併し、それが恐らく彼らの
――典型的なファッション・オーガ。
殃餓は、お互いモットーの下に集う。
思想、哲学、宗教、
モットーは多様性に富むが、共通している事もある。
それが、暴力による支配体制。
世界秩序の崩壊後、世は、実にシンプルな“暴力”と云う求心力を欲していた。
ファッション・オーガは他の殃餓程
「いつから居たンだ、このガキ?」
――
狩りの唯一の目撃者は、ほぼ間違いなく、巻き込まれる。
そう、相場が決まっている。
併し、目の前にいるこの殃餓共、予想以上の
ギラギラと輝き大地を焦がす
――どうにも調子が悪い…
あの頃の感覚が取り戻せないでいる。
やはり、縛りのない生き方に、未だ、慣れていない。
「まぁ、丁度いいッ!このガキも
「そうだな、ガキの新鮮な“カラダ”は貴重だ」
殃餓の一人が少女に手を伸ばす。
ポリバケツの
少女は、
続いて、更に外側から左手を大きく伸ばし、上方から殃餓の人差し指を握る。
握った指を共に逆関節に
右
少女の、
――ぎゃぁぁぁーッ!
殃餓の右手首は、あるべき位置とは真逆にねじ曲がり、人差し指と小指もあらぬ方向に折れ、
巨体の
瞬時に右腕を壊されれば、もう抵抗
起き上がると同時に、倒れ込んだ殃餓の喉仏を
再び立ち上がった少女は、そのまま前方に体重を乗せ、膝を
殃餓は、
――破壊。
人間を
少女は、いともあっさり、殃餓を壊した。
彼女以外、誰一人として予想し得なかった衝撃の
ハンドスプリングで跳ね上がり、倒立した状態で殃餓の首に両足を巻き付け、腹筋で上体を起こすと、頭を抱き締めるような形で勢いよく両腕を引き、両親指をその両目に突き立て、少女は飛び退く。
――目がッ、目がぁぁぁーッ!
潰された両目を押さえて、両膝を地に着ける殃餓。
金的に蹴りを入れ、前屈みに頭を下げた殃餓の耳後ろの
前のめりに倒れた殃餓の
間もなく殃餓は、望まずして生命活動の停止を余儀なくされる。
――確信。
少女は、知っているのだ。
人間の
その
否、
残る一人の殃餓は、
二人の仲間がやられたのは、その少女の容姿からくる油断。
腰程しかない身の丈の小娘に、あってはならい油断からの敗北。
正確には、錯覚。
素人だと思い込んだ錯覚。
恐らく、
あの身のこなし、
ガキだと思っているとヤラれる。
生かしたまま攫うのが無理なら、
――喧嘩じゃねェ~…殺し合い、だ!
「その小せぇ~ドタマ、叩き割ってヤル!」
大きく振りかぶられた斧は、
3mもの巨漢が振り下ろす斧は、想像を絶する破壊力。
――ブゥォオン!
空気を
岩をも砕く一撃。
絶体絶命の斬撃。
予見し
その
――な、なにィッ!!?
少女の
刃を右
パニック。
こんな細腕の
斧を握る手に
右腕の筋肉は
「ばッ…ば、化け物かッ!?」
「――
――ズブブッ…
皮膚と
握り
――ぐえぇッ!
腹部の激痛に
少女は、腸を握った
手にした腸を後ろから殃餓のぶっとい首に巻き付け、締め上げる。
殃餓の顔色は、みるみるとドス黒く変色、
――ゴリッ!
間もなく、
殃餓は、自分の腸で
――
悪漢
恨み
日常が暴力で満ち
それくらいに迄、
――収束の交差点
若い男の方が、返り血を
「助かりました、お嬢さん」
「――そう…」
「是非、お礼をさせて
「――礼には及ばない」
「
「……」
「村には、実家があります。食事と寝床を約束しますから、是非、同行下さい」
「――
――
この男は、礼をしたい、と語ってはいるが、
近場とは云え、ハイウェイを進む限り、
その為の
――いいだろう。
彼らは、ハイウェイを東に車を
互いの利害に一致する。
打算は、
今の時代、
損得を
横転したSUVは此処に乗り捨て、殃餓が乗っていたバギーカーで行く事にする。
一見して殃餓のものと分かる
SUVを押し止めた
運転は、その若い男がする。
後部座席に、毛布に包んだそれを大事そうに抱く女と白い少女が相席する。
走り出す、東に向けて。
運転席の男が、
男の話に、興味をそそるようなものは、何もない。
寧ろ、気になるのは、隣に座る女の
全く、話し掛けて来ない。
それ
彼女の興味は、
毛布の中身が、ちらりと見える。
――赤子、か。
予想の
併し、
――そう云う事か…
非情は、命の
――化け物か…
確かに、な。
いつの間にか、
願わくば、
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