第一章:妖性の戰耍皇女
1篇:荒野、彷徨う・前編
一つ、
一つ、乱に在り、
一つ、
一つ、闇に
一つ、愚直にして
一つ、愛深き
一つ、
――――――― 1 ―――――――
少女は、ハイウェイ・ルート14を東に歩を進める。
小さな
ポリタンクには、大小2つのキャップ。小キャップには、レバー式コックが添え着けられており、フロン・ゴムチューブが伸びている。
レバーを
――チュゥ…
半透明のフッ素ゴムチューブを鮮やかな赤い液体が
いつも無表情な彼女が、
落ち着いたところで、胸元から一片のプラフィルムを取り出す。
『
――ナック・アーノ。
国内有数のドヤ街の1つ。
異国の少女にとっては、都合がいい。
──ルート14/ルート110の交差点付近
遠く、砂煙を巻き上げるビークル。
激走する酷く使い込まれたSUVを
只ならぬ追走。
──ヒャーッハッハッハァーッ!
エンジン音に混ざり、狂気の雄叫び、が響く。
程なく、
スモークガラスではなく、単に純粋な汚れと傷でそう見えるフロントガラス。
投げ付けられた火焔瓶が、加速度のついた衝撃で無数の
前方視認が不良な時、人は無意識にブレーキに足をかける。
その僅かなブレーキングが、追い
急ブレーキを踏むバギーに釣られ、バランスを崩したSUVは激しく横転、ハイウェイ脇に投げ出される。
横倒しになったSUVに程近い場所でクアッドとバギーは停まり、降りてくるのは、“
荒野の
殃餓は、
汚染された有害な環境に加え、蔓延する感染病。今や、紫外線さえ、危険水域。そんな荒野で生まれ育った先天異常持ちの
そんな彼らが、建設的な生活様式を営み定住出来る訳もなく、刹那的な生き様が暴力による奪取、縦横無尽に荒野を駆ける暴漢、人の姿を借りた“鬼”、
殃餓共が巣くう荒野をビークル1つで走破しよう等、運が悪い、と片付けるのは論外。
逃れられる訳がない。
それは、単に“愚か者”の所業に他ならない。
――にしても…運が悪い、のは、わたしの
──事故現場
ハイウェイ・ルート14とルート110の交差点程近くの路肩で食事中の少女の目の前で、その事故は起こった。
殃餓に襲われたSUVが横転した箇所は、少女が座っている位置からたった20m程下った処。
クアッドから一人、バギーカーから二人、計三人の殃餓が横倒されたSUVに近付き、車内から憐れな被害者を引き摺り出す。
車外に放り出されたのは、20代と
身なりから、定住者のそれと直ぐ分かる。
女の方は、毛布に
――成る程…
「ヒーッハッハッ、大人しくしろッ!」
「た、助けて下さい!見逃して下さいっ!!」
見慣れた光景。
よく飽きもせず、同じ事を繰り返せるものだ。
飽きたとしても、繰り返さなければ生きて行けない。
奴らのそれも同じ事、か。
目撃者は、わたし一人。
気付かない訳もない。
どうせ、獲物の始末を終えたら、巻き込まれる。
――仕方ない…
「
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