第11話 相生山の戦い
吉良義昭の強い主張もあり、今川軍は天白川を越える作戦へと変更された。川の突破は非常に難攻するものの航空兵力と砲兵の火力と兵力の圧倒的な差に押されて織田軍は撤退したために川を越えることには成功した。
織田軍は撤退をするものの態勢を立て直して大江川緑地で徹底抗戦の構えを見せて頑強に抵抗を始めたため、戦線は膠着状態へと陥った。
今川軍の諸将達は戦線が膠着状態になったのは織田方が名古屋港を防衛しようしているからだと判断された。名古屋港は経済的重要であると同時に海上戦力の拠点を守ろうと考えていたのだと思われる。
この頃、知多半島にいた、朝比奈泰能は常滑市を攻略後、北上して東海市まで進軍していた。水野・織田軍は酒井忠尚、松平信定、大草松平家、知多半島南部の久松家を中心とした勢力と今川の駐留軍を残して包囲させていた。
朝比奈泰能の目的は織田に総攻撃をかけ始めた軍全体の状況把握にあったと見られる。特に関口親永らが朝比奈に城代の戸田康光の暴走に関する意見書が出ており、泰能が警戒を強めていたことが中央軍との合流を促したと見られる。
戦況が膠着状態の中で吉良義昭は自らの兵力と井伊直盛、飯尾連龍の兵力を率いて天白川を迂回する戦術に出た。
その動きを見た秀康は警戒を強める。総攻撃に備えて秀康指揮下の機甲戦力を豊明市まで進軍するように命令をしていた。
「吉良勢の動きが気になる、鳴海城に向かうぞ!」
秀康は鳴海城に向かい、山口教継らと合流すると共に戦局を見守る姿勢に転じていた。
吉良勢は豊田工業大学付近まで到達した。
吉良義昭は依然として東三河の有力者であったため、率いていた兵力は二万近い勢力を保っていた。それに井伊勢と飯尾勢が加わったため総兵力は三万を超えていた。
ヒューン!ドカーン!ドカドカーン!!
突然、砲弾が飛んで来た、それと共に「わああああ!!」という叫び声と共に織田軍が突如奇襲してきた。
「何事か!」
「織田軍が奇襲してきました!吉良勢が混乱しております!!」
「吉良義昭殿が態勢を立て直すまでの時間を稼ぐぞ!全隊、前に出よ!!」
奇襲された吉良勢の後方に井伊直盛がいた、直盛は吉良勢を助けるべく、部隊を前進させて敵の攻撃から吉良勢を守ることに決めた。
「吉良勢が攻撃を受けていますが、どういたしますか?」
「それより、砲撃は、どこからきている?」
「相生山から撃たれていると思われます!」
「謀られたか…我らは吉良勢の後退を支援するのみに留めて相生山に部隊を差し向けろ!織田勢は他にもいる可能性があるので警戒を怠るな!!」
井伊勢と対照的に飯尾勢は吉良勢への支援のみに留めて後方で敵の、さらなる攻撃を警戒し始める。
戦いは井伊勢が相生山から豊田工業大学の北の一つ山から流れ込んできた織田軍と井伊勢が激しく激突して膠着状態となった。この間に吉良勢は後退して態勢を立て直すことに成功するが名古屋第二環状自動車道を南下してきた織田軍と激突して激しい攻防戦が開始される。
「相生山に向かっていた部隊が戸笠池付近で織田軍と鉢合わせて戦闘を開始しました!」
「全隊を相生山に向けろ!!」
飯尾軍と織田軍は戸笠池のある公園を挟んで激しい砲撃戦を繰り広げた。飯尾勢は四号戦車と三突とマーダー38Tを中心とした戦車、織田軍はM4とM10ウルバリンを中心とした戦車であった。
相生団地でも戦車と歩兵による突撃を両軍が行い団地の建物を挟んで激しく銃撃戦を繰り広げた。
織田軍は天白川を迂回しようとした今川軍に対して事前に行動を察知して相生山方面から奇襲攻撃をかけると同時に東海道方面と長久手方面からも兵力を出して今川軍を包囲する作戦を実施した。このうち東海道方面から来たのは信長率いる主力であった。
鳴海城
鳴海城に入った秀康の元に次々と戦局の変化を伝える知らせが届いた。
「直ちに吉良義昭殿を救うために出陣する!」
「「おおおお!!」」(複数の兵士の声)
秀康は自らが引き連れていた少数の戦力と山口教継が率いる軍勢と共に東海道を通ってきた織田軍に側面から奇襲を仕掛けるべく鳴海城を出陣した。
松平陣営の動き
豊田にいた、大久保忠世は後詰めを残した上で兄弟と吉岡定勝らを率いて相生山に向けて出陣する。酒井忠次は今川義元との交渉を終えて豊田に入り、兵力をまとめて大久保勢に遅れるものの出陣した。
豊明市にいた機甲戦力も相生山に向けて進軍を開始した。
こうして相生山での決戦が開始されたのである。
秀康軍は山口教継率いる約二千五百の兵力と戦車隊と共にタウン伝治山の傍を抜けて古鳴海交差点まで一気に突撃した。狙いは織田軍主力が通ってきた東海道の天白川にかかる橋を破壊するためである。この破壊が成功すれば敵軍を逆包囲できると踏んだ突飛な作戦であった。
「正面!敵を見つけたぞ!!」
先頭を走っていた榊原康政が上に乗る四号戦車が敵陣へ突撃した。秀康軍には敵と同じM4戦車などが含まれていたので砲塔部分を白く塗装して同士討ちを回避しつつの攻撃であった。
織田軍の主力戦車隊は既に飯尾勢と戦っており、橋周辺には少数の戦力と補給用の部隊が待機しているだけであった。そこに秀康率いる部隊が突入したので大混乱になった。
「鳥居!爆弾だ!!」
「はいよ!」
藤川緑地にあるサンヴィラ野並A棟前にある橋を超えて名古屋市立:若宮商業高校前を通り抜けて天白川の土手を通り織田軍を奇襲した鳥居元忠と平岩親吉率いる精鋭が橋に到達して爆弾を仕掛けた。
「橋を爆破しろー」
「はいよー」
ポチッ
ドドドカーン!!
橋は爆破され織田軍は東海道方面からの補給と退路を塞がれてしまった。
「「やったぜ!」」
パチーン!(鳥居と平岩がハイタッチする音)
「このまま織田軍を攻撃しろ!」
「「うおおおおおおおおお!」」(複数の雄たけび)
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