第7話 喧嘩と復讐劇

 正信と忠勝と康政は仲が良い、三人とも同年代で領主の息子ということもあり、自然と仲良くなった。お互い相反する面はあっても良き理解者ではあった。康政だけ次男だが兄が病弱なことと忠勝と相性が良く三人とも能力もそれぞれ強みを持っていたこともお互いに力を認めあうと共に均衡が保ちやすい関係にしていた。

 三人の朝迎え方は独特である。まず一番最初に起きるのは正信である、精密な時計でも体内にあるのかと疑いたくなるほど夜明けとともに起きる。起きると歯を磨いて行水して修行服を着る、そして弟と合流して山に修行に出かける。本多正信の家系は心身深く、寺の僧侶のようにストイックなところがあった。木の枝と枝を忍者のように渡りながら山まで向かって兄弟で武術の練習をしていた。正信は知略重視のためか武士としての最低限の心得と護身術しか身につけていないが正重と互角以上に渡り合える実力はあった。


 正信の次に起きるのは康政である、康政も歯を磨いて風呂に入り、庭で剣の修行を始める。修行を始めると忠勝が起きだしてノロノロと歯を磨いて風呂に入り、二人と合流する。そこからは三人一緒で朝食を食べる。この朝食は重要で三人が実家にいると出てこない品物があるので秀康の近くにいると幸せな思いができる。他にも遊び相手に事欠かないし、周りの目を気にしなくて済むなど精神衛生に非常に良かった。


「さて行きますか!」

「「おおー!」」


 戦闘用の軍装はパワースーツの上に魔装甲冑を着る仕組みである。魔装甲冑は防御シールドを張るだけでは無く強度も軽量さも鉄より優れていた。さすがに空を飛んだり、超重量のモノは持ち上げられない。

 代わりに平らな地面であれば電動ローラースケートで走ったり、岩石くらいであれば投げ飛ばせる。歩行スピードは現在は最大で60㎞を記録している。試験的に磁石式の歩行システムも開発中である。

 ちなみに日本独自の技術は東日本の方が強い、特に関東圏は激戦地のため進んでいる。しかし、貿易面では太平洋の一部とロシアとの貿易があるだけである。逆に西日本は海外とのアクセスは強く、経済的、物質的な豊かさは勝っている状況である。

 東海地域は中間地点のため、バランスの良い立地となっている。ただし、激戦地としては関東圏以上に厳しい面を持っている地域でもある。

 三河は尾張方面に経済及び人口で負けるが生産力と軍事面では勝っている傾向にある。長い争いで多少は消耗したが人口は意外と減っていないのでポテンシャルは今だに高い


 長い無駄話になったが正信、忠勝、康政は一族を代表する立場だけに見栄もあり、最高級の魔装甲冑を着ている。正信が紫系、忠勝が黒系、康政が青系である。

 装備は忠勝、康政が槍を装備してライフルと刀、手榴弾など完全武装、正信は刀、スナイパーライフル、サブマシンガン、手榴弾及び鬼畜装備(針とか毒とか拷問系)を装備していた。

 三人だけかと言うと嘘で一応はトラップや不意打ち対策と予想を超える大人数対策で服部忍者隊が一個小隊だが警戒のため事前に入っている。(大人数の場合は近くに待機する空軍を出動させる予定である。)


 ※音速を超えていても防御シールドとセルロースナノファイバー技術で防御力が向上してジェット機は相対的に弱体化した。よってジェット機はコスト面と使いづらさから消滅した。代わりに空軍にはヘリがいる、レシプロ機も格段に性能が向上したことから主力となっている。


 もっともズルかと言うと大岩山に待ち構える相手のいじめっ子集団も完全武装した多人数であることに変わらなかった。装備は三人には劣るが人数は多い、服部忍者が後方支援要員なのに比べれば相手の方がズルである。


 ※中には大人も含まれており、人数は数十人はいたと思われる。明らかに子供の喧嘩では無かった。


 三人は事前に現地入りした忍者達から情報を得ており、相手の待ち受けている場所にピンポイントで向かった。しばらく歩くと大人数の余裕からか相手の方から姿を現した。


「平八郎の面汚しと三河の最弱と病弱な兄を持つ次男坊ども良く来たな!!」


 褒めてやろうとばかりに大人数で笑いながら集まってくる。


「腰抜けのくせにして良く来たかな!褒めてやる!!」


 三人は敵を確認すると忠勝と康政が左右に分かれて相手が話している隙に敵陣に突撃を仕掛けた。


「なんだ!ぎゃあああああ!」

「話している間に仕掛けてくるとは卑怯だぞ!」


 などと敵は叫ぶが時既に遅く、真っ先に狙われた大人たちは二人に槍で突き刺されて死んでいった。弓兵が弓を放っても二人に弾かれて無駄となった。


「なんなんだ!いったい!!」(恐怖)


 正信の正面にいた少年が恐怖で震えだす、それをゲス顔というか性癖丸出しというか…鬼畜な顔で正信が見ていた。


「こうなったら、三河最弱を…ぐふっ!」


 少年が何かを言って刀を振りかざした瞬間に接近した正信が相手の腹にパンチを入れる。さらに刀を持っていた両手を手刀で叩いて相手の刀を地面に落としてしまった。


「くそおおおおお!」


 別の近くにいた少年がやられている仲間を助けようと近づくが刀を振り上げた瞬間に足蹴りを胸部分に入れられて吹っ飛んで木にぶつかり枝に串刺しにされてしまった。


「「うああああ!」」(複数の声)

「いたいよおおお」(正面にいた少年)


 正信は正面にいた少年に近づくと相手が戦意を失って恐怖の目をしているのを頭を掴んで覗き込んで確認後に小刀を抜いて相手にハッキリ分かるように相手の胸へ向けて差し込んだ。


「やめて…ウグッ…」

「弱すぎるよ!私が三河最弱なんだからね!!」


 もはや意味不明な言葉である。周囲にいる少年たちは恐怖でたじろぎながらも武士の意地を見せるように正信に突撃する、正信はワザと痛覚を刺激する攻撃や金的を攻撃するなど嗜虐趣味溢れる攻撃で相手を蹂躙していった。


「かたづけたのだー」

「簡単だった」


 そう言いながら近づいてくる二人の目に入ったのはお気に入りぽい最後の少年に拷問をしている正信の姿だった。何かの道具で爪を剥がそうとしていた。


「やめてくれ…助けて!」

「ええ、これからが楽しいんだよ!」(ゲス顔)


 あんまり酷いので康政が拷問されている少年を後ろから刺した。正面にいた正信に届くように貫通させるが正信はヒラリと避けてしまった。


「酷いなーこれからだったのに…」

「こんなことするから腸が腐っているんだ!」

「敗者をいたぶって何が悪いのー(純粋さを装う悪魔)」


 呆れてモノが言えない康政と「一撃で殺せば良いのだー」と反論する忠勝がいた。


 こうして戦いは呆気なく終わった。


 この事件は世間に『松平家に仕える家臣を襲った旧西吉良領家臣の子弟達』という見出しで報道された。さらに三人対して大人数だったと付け加えていた。


「これは反逆行為である!」


 この事件を口実に国境近くに集結した松平軍が一気に西吉良領に突入して各地を占領していった。抵抗は少なかったが途中で警察や役所及び裁判所の抵抗を受けるが完全武装した兵士が突入すると抵抗むなしく降伏した。


 捕えられて建物から移送用の車に移動させられる人達がいた。彼らは旧吉良家の家臣達である、一人の男が負け惜しみとばかりに立ち止まり罪状を問いただす。


「主君反逆罪により死罪とする!」

「何の権限があって判断するのだ!!」


 負け惜しみとばかりに旧吉良家の家臣達が叫ぶと近くにいた男がスマホを叫ぶ男に渡す。男はスマホを耳に当てた。どうせ秀康辺りだろうと考えていた。


「私だよ!覚えてくれているかな?」

「…義安様…」

「よかったー覚えていてくれたんだ!」

「どうして…」

「えっ!どうして電話に出たかって?聞きたい?聞きたいよね!」

「…ピッ…」(電話を切る音)


「ツーツー」(電話を切られた音)


「どうして切るかな…まぁいいや、どうせ死罪だし!」


 そう言って吉良義安は不満そうにしながらも嬉しそうだった。


 その日、裏切った西吉良領の家臣達は殺された。全員斬首の刑であった。

 家族の方も捕えられたが殺されることは無かった。代わりに多くが奴隷という形で松平領で人手不足の地域に派遣された。もしくは船に載せて伊勢へと売り飛ばされた。(いわゆる乱取が行われた。)


 こうして秀康は岡崎市、安城市、西尾市、幸田町を中心とした織田方の勢力圏以外の西三河を支配下にいれた。同時に義安の支配下ということもあり、蒲郡市も秀康の支配下に入った。


「廃城令も出そう!」


 秀康は岡崎城、安祥城、西尾城以外の城と砦を全て廃城にするように命じた。この命令は酒井忠尚、松平信定、大草松平家以外は反発しながらも従った。



 ※航空基地と補給基地など前線基地は残された。兵力を岡崎に集中させて経費を削減すると共に権力を秀康に集中させ始めた。


 合わせて家臣達も岡崎城下に住まわせた。岡崎城周辺を城下町として指定し、指定した場所を囲うように壁を建設した。それまで分散していた家臣の家は引き払うと同時に売り払わせた。他に廃城にした土地も売ることで岡崎城下で立ち退きする人々の代替地として提供した。



 ※従った理由は家臣達も財政難に喘いでいたからである。移転時の費用は土地の売却料と廃材の売却または再利用による費用軽減、旧吉良家臣及び抵抗した人々から没収した資産から捻出された。



「やはり、尾張に侵攻する必要があるな!」


 これらで岡崎城下の治安は劇的に向上した、また松平本家の力も回復したが…財政的な厳しさと度重なる戦による消耗は解消されなかった。これ以上の改革をするためにも織田家との戦いは避けられなくなった。


 ※織田家との戦いは公約でもある、奪われている西三河の市町村を奪還するという大義と財政的な助けになるという切実な理由及び求心力の向上を狙っていた。


 この頃、今川も今だに臣従しながらも密かに抵抗を続ける三河と遠江の勢力を削ぐために織田との戦いを望んでいた、既に各地の城代及び勢力に織田家攻撃の命令を出していた。


 ここは岡崎城の謁見の間、城主ズラの戸田康光は城主の座るところに胡坐を掻いて座っていた。


「起死回生の一手を!」


 岡崎城代の戸田康光は強まる今川の力を恐れていた。松平家の勢力拡大を黙認するかのような優柔不断な態度には明らかに今川に対する反逆心が隠れていた。一緒に来ていた西郷正勝は呑気に城下に遊びに出たり、秀康に会いに行って秀康に煙たがられたりしていた。

 吉良義昭や井伊辺りに声をかけて織田家との戦いで活躍して今川に媚びを売ると同時に城代としての力の拡大を画策し始める。


「…」


 戸田康光の近くで名ばかりの書記長として座っている義安がいた。彼は呑気にお茶菓子を食いながらお茶を飲んだりして、無能な馬鹿を装いながら康光を監視していた。(今川が義安を康光の傍に置いたのは監視という意味合いが濃い、康光は義安に甘く接していた。つまり、義安は三重スパイの立場にいた。)


(康光め、何か企んでいるな…(´~`)モグモグ…今日のは美味しいな!どこの店のだろうか?)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る