第4話 今川時代の始まり

 秀康は新手の軍勢が現れたと聞いて驚いて

富正から双眼鏡を受け取り見に行くとビックリした。


「ああぁ…見たことある旗だな…」

「今川の旗ですね…」


 吉良軍と離れているが近くに今川軍が来ていた、

旗は同じ足利一門の旗を使っているが赤鳥の旗印が輝いていた。

軍勢も吉良軍や我が軍などとは装備のレベルが違いすぎるし、豪華過ぎて戦いは話にならんな!

数?数えて何になるの?というレベルです!!


「おいおい、数正よ!四号戦車が見えるんだけど…」

「ええ、三百両はいます、あれは朝比奈戦車隊です!」

「一応聞いていいかな?なんで断定できるのかな?」

「それは…松平家の財政が悪いので、財政を良くするために設計図渡して、さらに戦車を売りましたから…」

「ちなみに全体で、どのくらい、いると思う?」

「まぁ駿河と遠江に複数の大規模な戦車工場もあるので…」


 貧乏って本当にヤダね…とツクヅク思うのである。

もう勝てる気がしない…

そう思っていたら吉良軍が今川軍に合流してしまった。

そして今川軍から一人の立派な甲冑を着たすげぇ怖い人が出て来た。

すげぇ怖い人が出て来て弓を構えた。

そしてコチラに向けて弓を放ってきた。


ビュウウウウウウウン!!ドカアアアアアアアアン!!


という感じで後方にあった山に着弾して大砲みたいな音がした。

怖いが後ろを確認すると山がえぐれていた。

凄い弓取がいるんだな!!という感じである。


その後、今川方から使者が来た。

使者は義元公が俺に謁見を望んでいると言ってきた。

あのすげぇ怖い武将も来るのかな?!


陣地で待っている間、生きている心地がしなかった。

心配して富正と成重、そして数正と忠次が傍にいてくれた。

今にでも床几から崩れ落ちそうである。


ガシャ!ガシャ!ドン!


という音が聞こえた後に声が聞こえて来た。


「駿河・遠江国守護大名!今川義元だ!入るぞ!!」


凄い名乗りである、予想していたよりも…

入ってきた人を見て愕然とする…

今川義元ってあのすげぇ怖い武将かよ!!


拝啓、父上様!あなたは言いましたよね!!今川義元は腰抜けだって!


「それで!秀康殿、話があるのだが…」


キタああああああああ!!


ここは義理父様(秀吉)から教わった奥義を発動するしかない!!


奥義:フロント・ダイブロール土下座


「すいませんでしたあああああ!!」


「「「工エエェェ(´゜д゜`)ェェエエ工」」」」」(義元、忠次、数正、)

「「…」」(富正、成重)


皆と背景が白くなって目が点な感じである。

時が止まった。

最初に口を開いたのは義元だった。


「いや…別に謝らせに来たわけではないよ…」

「さようですか!余りに義元公が恐ろしすぎて!!つい…」


※秀吉みたいに「あざとさ」が無い、頑固者が素直に謝っているふうに相手は感じる。

また、秀吉みたいに媚びを売っているようには見えないし、実際に媚びでは無く、素直に負けを認めているだけなのが秀康式(外交とか策略は出来ないタイプ)

なので強く押されると逆上する可能性を家康ほど隠しきれていないところも秀吉と家康の劣化版と言われる原因

それが独特の凄みを生んでいる。


義元も何を言ったら良いか悩んでしまった。

そこに太原雪斎が来て話し合いになった。

(たぶん、陣幕の後ろに隠れて聞いていた、)

吉良義昭の件は彼の独断であると弁明された。

処罰は今川が決めるそうである。

その上で要求されたのは以下の通りだった。


①岡崎城に城代を今川家が派遣する。

②松平家は領地からの全収入の六割を今川家に差し出し、岡崎市から徴収した収入の一割を城代に差し出す。

③今川家の如何なる軍役と普請を手伝い、徴兵に応じる。

④今川家に一年に数回は挨拶に来る、また、呼ばれたら来る義務がある。

⑤今川分国法及び上記以外の今川家の決めたルールに従い、今後改定あるいは新法が出来たら従う。

⑥吉良義安領が今川の領地となることを承知すること、及び承諾の為の血判状にサインする。


「以上だが、異存は無いな!」

「はい!よろこんで!!」


凄い内容だが…対抗する手段は後で考えれば良い、今は上手く乗り切らねば…

満足したのか義元公が帰ろうとしたら太原雪斎が義元公を呼び止める。


「義元様!」

「なんだ、雪斎なにかあるのか?」

「はい、こたびの吉良義昭公の蛮行に対する松平家の働きに対する恩賞を差し出さねばなりません!」

「おお、そうであった!!何が良いかな?」

「西三河の元吉良領などはどうでしょうか?」

「そうだ!そうだ!秀康殿!!」


茶番としか思えない。

その程度で演技を崩すほど俺は甘くないぞ!


「はい!義元様!!なんでしょうか?」

「貴公に西三河の吉良領を与えようと思うがどうだろうか?」

「義元様から領地を頂けるのは誠に嬉しいのですが…」

「気にするでない!私の感謝の気持ちだ!!私の面目を建てるつもりで受け取ってくれぬか!」

「…そこまで言われましては!受け取らない訳にはいきませんね!!」

「そうか!受け取ってくれるか!!」

「はい!よろこんで!!」


こうして西吉良領を秀康は手に入れた。

ただし、条件付であることは見込み済み

なので心の底からは喜んでいない。


「それとな、秀康殿、個人的にもお礼がしたいのだ…」

「と言いますと?」

「貴公に五万貫ほどプレゼントしたい!」

「おお、それは良いですな!おい、康忠を呼んでまいれ!」


※一貫、約15万くらい、五万貫は約75億円くらい


俺が富正辺りに呼んで来るように言うと義元公が慌てる。


※半分は素でやってる、秀吉ほど器用でもなければ、スムーズでもないところが秀康式

剛毅な奴と言われる由縁、三河武士という未知との遭遇をした多くの有名武将と同じ感じになる義元公


「まて!まて!秀康殿!!」

「なんでしょうか義元様?」

「何故に長沢松平家の人間を呼ぶのか?」

「これは可笑しなことを聞きます、長沢松平家は此度の戦いで一番活躍しましたので当然でしょう!我が家臣なのですから!!五万貫を渡そうと思うのです!」

「ぐぬぬ…確かにそうだな!!」

「では…」

「まて!!秀康殿、長沢松平家に五万貫渡すのは承知した、しかし、それではお主にプレゼントできない」

「私は大丈夫ですので、お構いなく」

「そういうわけにはいかない!お主には十万貫を渡そう!!」

「それは義元様!太っ腹ですな!!有難き幸せです!!!」


最高ではないか!!合計で十五万貫か!嬉しすぎて演技じゃない笑みが出てくる。

大いに嬉しいので義元公とはマブ友になったくらいに仲良く話をした。

義元公は帰っていった。

貰ってしまった以上は今川家には逆らえない。さて、どうしたものか?

まぁ後で考えれば良い…

取りあえずは危機は脱したようである。


「ふぅ…それでは康忠を呼んでまいれ!」

「はい、呼んで参ります!」


康忠には松平家の家臣であることを誓って貰うために

五万貫をプレゼントして好感度を上げねばな!!


「康忠、入ります」

「おう!入れ!」


康忠が入ってきた。若いが見慣れた人物である。

そういえば忠輝の奴は俺が死んだ後も宜しく

やっているだろうか?

心配だったが…今更心配してもな!


「康忠よ、此度の活躍、御苦労だった!」

「ありがたき幸せです!!秀康様も元服おめでとうございます」

「ああ、そうだったな…それでなお主にプレゼントしたいのだ!!」

「はい、秀康様から頂けるのであれば嬉しいです」

「五万貫をプレゼントしよう!!」

「五万貫!!!困ります!」

「何が困るのだ?」

「大金すぎます!身に余り過ぎます!!辞退いたします!!」

「だが、お主は此度の戦で被害を受けただろう?」

「うっ!そうですが…」

「受け取ってはくれないか?」

「では、五万貫は多いので三万貫は秀康様に献上致します!」

「それでは悪いのぉ…」


喜んでくれると思うたのだが…多すぎたかな…


「それでは、秀康様の双子の弟で当家の嫡男である辰千代を紹介したいと思います!!」

「ほう、辰千代とは…」


 まるで忠輝だな!俺に双子の弟がいたのか!!永見かな?いや、長沢松平家に養子出されているのであれば、それは非常にめでたきことよ!!


「辰千代入れ」

「はい、父上!」


うん?!聞いたことある声だな…入ってきた男を見て秀康は度肝を抜かれる。


「お前は忠輝!!」


床几を立ち上がって叫ぶものだから周りが困惑している。ただし、富正と成重は俺と同じ反応だ!


「いや、これは、まだ元服しておりませんぞ!」

「お、おう、いや~神のお告げがあったのだ!!」

「はい?」


もうこれは忠輝で良くねぇ?と思うので忠輝の供養も兼ねて名付けてしまえ!と思い神のお告げだと言って名前を押し付けよう!!


「兄上様、私も同じ夢を見ました!忠輝であります、遠く越前まで兄上様が支配する夢を見ました!!」

「なにぃ!?」


なんだと、この忠輝もどきが何か意味不明な事を言っておるぞ!!えっもしや…もしかして…本当に忠輝なのか??確かめねば!!


「コホン、そうだ康忠よ!ワシは久しぶりの兄弟と話がしたいので…」

「おお、これは申し訳ありませぬ、私めは退散致しましょう!!」


そう言って康忠は去っていった。なかなか気の利く奴である。


「数正と忠次も外してくれぬか?」

「「わかりました」」


二人も去っていった。


「さて、忠輝よ、お主、本当に忠輝か?」

「はい、兄上、その忠輝でございます!!」

「なんとぉ!!」


ビシィ!!


嬉しさの余りに俺は忠輝に抱きついた。


「おおお、忠輝久しぶりだな!!」

「はい、兄上!76年ぶりに再会できてうれしゅうございます!!!」

「へ!?」(茫然とする秀康)


拝啓、父上様、久しぶりに再会した弟が…意味不明なことを言っておりますぞ!




 忠輝との会談は中々面白かった。豊臣家が滅ぼされたことを聞いたが…

まぁ仕方がないんじゃない?という感じで軽く受け流した。

正直な話、現在の状況的に過去の話にかまけている余裕は無かった。

今を全力で生きる!それが俺の流儀ということで!!


 さて、とりあえず忠輝の元服を済ませた、立会人兼名付け親

という立場に俺はなった。これで忠輝も生まれ変わって生き直してくれ!

頼むぞ!!我が弟よ!


 長沢松平家には二万貫入ったとはいえ、三万貫をタダで貰ったという

のでは俺の気が済まないので忠輝に最高級の立派な魔装甲冑一式と刀と武装を貰った三万貫で見繕うことにした。

 さらに忠輝の家臣のも見繕い、通信車両も購入してプレゼントした。今回の戦で迷惑をかけた立信寺、赤石神社、宝樹院にも奉納をした。今川との協議により、長沢松平家の領土を国府駅の西明寺を境界として決めて貰った。これで長沢松平家は大きな力を手に入れるはずである。


京ケ峰の戦いで獲得した戦利品を平等に分配することに決めた。捕虜は全員、タダで解放した。彼らも三河の同胞なので寛大な処置で帰らせて松平家の将来の拡大を支持する勢力になることを期待する。



今川家との仮契約が終了したので岡崎城に戻ることになった。広忠公が支持してくれるのは確実なので本契約は問題無いだろう不満分子が騒いでも気にする必要は無い、むしろ騒いだ奴の領地を奪いたいので騒いでくれた方が助かるくらいである。


今回の戦いに参加した連中の中にも不平を言うものはいたが説得するのは容易だった。口では愚痴を零していても現状今川に対抗できる力は我々には無い!!その事実の前には皆黙らざるおえなかった。


岡崎城に帰還する間に松平長親が激しく俺を糾弾しようとしたが…既にご老体のためか俺が来る前に疲れて二の丸に帰っていった。



俺は岡崎城の一室に重臣達を集めて会議をすることにした。

今川の城代が決められて派遣されて、来る前に今後の作戦を考えなければいけなくなった。深刻な事態かと考えたが…重臣達と話をしてみると…意外に…楽観的に考えて良かったようである。(笑)


まず、我が松平家は分裂状態で松平本家の支配領域は無いも同然であり、岡崎市ですら支配しているとは言い難い状況であるという驚愕の事実である。つまり松平本家は倒産寸前の大名だった。だから、今川義元公は広忠公では無く、俺に期待したのである。


 今川にとって西三河は全く支配の及ばない地域であり、むしろ、西三河の松平家を利用して安全を確保した上で東三河への支配を本格的に強め、外敵から攻撃されないで安全保障を確立できるというシナリオである。

 さらに俺が松平家を糾合して支配を強めれば松平家の領地収入が増えて自分たちの懐を肥えさせてくれる。まさに一石二丁なシナリオを考えていたのである。


要求されていた領地収入とは税収のことを意味している。しかし、税収は各市町村が徴収しており、大名は各市町村の予算から安全保障費としてお金を貰っているにしか過ぎない。これが今川や武田辺りだと各市町村に強い力を行使できるので状況は変わるが…我が家は現在、弱小で力など無いので取り立てるのすら難しい。しかも、酒井忠尚、松平信定、大草松平家が幅を利かせている。


こいつ等を何とかしなければいけない!


ここで役に立つのが今川家の後ろ盾である!!そう、虎の威を借るのだ!今までは酒井忠尚、松平信定、大草松平家の方が松平本家よりも強かった。それが今!今川というスーパーパワーを我々は手に入れた!!この力を使用すれば連中から支配権を奪うのが大変楽になる。


今川の協力を得るためには今川分国法と今川のルールを知る必要がある、実は、これらは駿河と駿河側の遠江では守られているが遠江の大半と三河では守られていないのが現状である。そこを突いて我々が積極的に今川のシンパになったフリして上手く法律やルールを使って敵対する勢力から支配権を奪うのだ!!

とりあえず、奪っても今川が文句を言わないことが確定している地域それが西三河である。この西三河で我々は我々に従わない勢力を駆逐する!!


「考えれば考える程に嬉しいな!」


 そう俺が能天気に言うと数正殿が口を開く


「その前に問題があります」

「なんだ?」

「まず、城代の存在が邪魔です、次に西吉良領の存在です。これを何とかしないと話が進みません。」

「確かにな…」


 城代が岡崎にいると近くで我々の謀略を見られてしまう、そうすると邪魔しようと介入してくる危険性がある。城代が誰なのか?そいつが我々と仲良くするタイプなのか?これが重要になってくる。次に西吉良領である。酒井忠尚、松平信定、大草松平家のような大物に取り掛かる前に新たに自分の領地になった領地を満足に支配できないのでは大物に対抗できない。

 西吉良領は元と付けたいところだが…義安殿からは権利を奪えても事実上の支配者となった義安殿の元家臣達は据え置きになっており、こいつらが素直に我々に従うことが無い、である以上は排除しないといけないのである。今川義元はワザと据え置かせて俺の実力を測ろうしていると解釈できる。


「作戦を立てる必要があるな…」


 これらを考える必要があるが…その前にやらねばならないことがある。


「恩賞として手に入れたお金の使い道はどうしますか?」

「ふむ、それだが十万貫は我が松平家の未払いの賃貸料に使う」

「はい、しかし、それだけでは使い切れませよ?」

「うむ、残りだが、まず京ケ峰の戦いに参加した戦闘要員に百万円のボーナスを出す、次に非戦闘要員に五十万出す。率いて来た武将には人数×五十万円だそう!!」

「「「なんとぉ!!」」」(複数人が反応した。)


 そうそう、この世界の貨幣は円というそうである。一貫とか一両という言い方は支配者側がカッコつけて使っているだけで日常生活は円で統一されているそうである。


「なお、立札を出して広く告知するため、ピンハネはできんぞ!!」

「「…」」(数人が悲しそうな顔をした。)


「さらに、遺族年金及び戦いで死んだ全死者のための葬儀代とする。それでも残ったお金は後ほど別の用途にしようする。」

「わかりました。」

「それでな、康忠殿から貰った、お金の残金だが…残金で城代が来たら、大規模な戦勝宴会を岡崎市内で開く、これには戦場になった長沢松平家の領民も参加させる。宴会に参加した人々にも温かい食事を配るぞ!!」

「「「おおお」」」(複数人が感心する。)

「では、準備に取り掛かって欲しい」

「「「分かりました!」」」


 戦勝宴会だが城代が来てから行うのには理由がある、城代をもてなすためではない、城代も参加させなどしないし、参加しないだろう。目的は京ケ峰の戦いに参加した兵士と家族、遺族に俺の粋な働きを見せると共に忠誠を誓わせる。それと同時に岡崎市民に岡崎市の支配者は城代では無く、この俺だ!!という事実を見せつけるのだ!!


「義元ごときに、良いようには使われんぞ!!」


 拝啓、父上様、私は打倒今川義元を掲げますぞ!貴方が出来なかったことをやるのです!!

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