第2話 岡崎城を取り戻せ!

 朝起きれば頭が重たい…

 いったい何が起きたのか…

 目を開けているのに暗いと思ったら誰かの足が…


 もしや…女子の足か…

 期待しながら足をそっと持ち上げると


 「なんじゃい!仙千代の足ではないか!!」


 ブンッ!(足を放り投げる音)


 「まぁ当然だな…」


 昨晩は両隣に富正と仙千代の布団を置いて寝た。


 仙千代は寝相が悪いのは知っていた…


 富正は規則正しく寝るので問題は無い。


 (女子と寝たいのぉ数正殿とかどうだろうか…押せばイケそうな気がするが…)


 「いかん!いかん!今日は戦の日だから!!」


 朝起きたら剣術の修行をした、体は訛ってはいないようだ!富正と仙千代も訛っていないようだな!


 戦は何時の時代だろうと兵器が変わろうと同じ原理で動いている、それに実際に戦うのは配下の武将達だ、彼らのヤル気を出させて戦うのが戦である。謀略などになれば時代など関係ない、孫子の兵法が幾千年経とうと有用な時点で分かるというものだ!それに俺は秀康だぞ!!そこらの凡将などには負けない。


 三人で井戸で行水をした。こちらの世界にも井戸があるということはそういうことであろう。



朝食も生卵に海苔、お新香、白米という超豪華だった。おいおい、松平家の財政は大丈夫なのか?


 その後、呼びにきた数正殿に従って皆が集まる場所にいった。そこに集まってくれた陣容は数は少ないが中々であった。


 本多重次、酒井忠次、石川数正、家成、本多忠真、平八郎、本多正信、三弥左衛門兄弟、榊原清政、小平太兄弟、大須賀康高の計十一人であった。


 広忠公はいない、これは俺が独断で行うこととしているからだ!!


 意外に凄いのは酒井忠尚の家臣である、榊原家と大須賀家が主力を引き連れて参戦してきたことである。

 大須賀は小平太に誘われたのが大きいようだ。(親友のためだと思われる。)


 「まずは、この中で元服していない者に名を授けなければな!どうすれば良いかな?」


 少し謙虚に聞いてみる。


 「ここは、秀康様が決めるべきでしょう」


 示し合わせていないというのに重次が俺の望んでいる答えを言ってくれた。さすが重次だ!!


 「コホン、だが俺が決めて良いものだろうか?」


 だが、簡単に納得すると後がうるさい連中だからな!ここは謙虚に行くのが正解だろう。


 「それでよろしいかと思います。」(数正殿の声)

 「右に同じ!」(忠次殿の声)


 これだけの人間が言っているし、他もうなずいているのでいい頃合いだな


 ここからは茶番である。元から決まっている名前の発表会だ、正直詰まらん。


 「では、平八郎は忠勝、小平太は康政、仙千代は成重、源四郎は富正、三弥左衛門は正重でよろしいか?」


 「「「「「はい!」」」」」(新たに名前を与えられた五人の声)


 「名前も決まったことだし、出陣しますか!」


 「お待ちください!」

 「なんだ、数正殿、何かあるのか?」

 「若君は髪の色が黒のままです!!」

 「うん?それがどうした」

 「武士は髪を長くして染めるのが習わしです!!」

 「そんな決まりがあるのか!」

 「はい、いかがしますか!」


 何と、そんな決まりがあるとは知らなかった…だが染める色は即決出来た。


 「では、赤にしよう!!」



 こうして俺は赤に染め、富正は銀髪に染め、お仙は薄緑に染めた。


 髪を染めて戦装束に身を包んで出陣する!!


 城を出て門のところまで行くと軍勢が待っていた。


 総勢約二千余りである。


 みな色とりどりの甲冑を着ていた。


 今回、俺は陣馬羽織を中心とした魔装甲冑なので問題は無さそうである。ただ、防御シールドに関しては数正殿に付け焼刃で教えて貰った程度なので実戦で戦えるかは怪しいのが難点である。

 富正と成重も魔装甲冑を身に着けるが今回は俺と同じで簡単なのにして貰った。戦国時代の鎧よりも格段に軽いのは実感できたが…本当に強度が鉄より硬いのかは実感は無い

 出陣に当たり、戦闘車両などの軽装甲車両だけで行くことにした、戦車を中心とした重装甲戦力は後方に待機させている。砲兵も同じで待機させる、今回は馬に乗って正々堂々と進軍する。


 ちなみに馬は普通に現役だった、燃料を無駄にしたくないという理由だけではなく、パワースーツや防御シールドの応用、品種改良によって能力が大幅に向上したらしい、大きさは戦国時代のとは違い過ぎて乗り心地が悪いのが難点だな…



 岡崎城の近くまで近づいても全く抵抗は無かった。それどころか岡崎市内の人間達が見物とばかりに外に大勢出て来た。


 抵抗が少ないのは相手も二千人程度しか兵がいないからである。現在松平家全体で動員可能総兵力は二万六千を超えるくらいだそうである。しかし、実際は度重なる織田との戦での損失と財政難による装備と人員の欠員により、その半分まで下がっている。そのうち信定は桜井松平家の戦力しか出せない、大草松平家、酒井忠尚、長沢松平家は広忠公に付いているか微妙だが、それぞれ思惑が異なるために団結はしていない。

 それ以外だと広忠公に付いていても俺に付いていくか悩んでいる連中と…行動出来ないで物見している連中がいる。


 集まってきた物見の連中の中にも大勢の松平の家臣や兵士が混ざっている、連中は俺の言動を見て付いていく主君をえらぼうと値踏みしているのだ!


 いいぞ、もっと集まれ!


 岡崎城周辺は都会と言っても問題無いほど発展していた。しかし、木で出来た建物や家も多く見られた。やはり、大部分の人間は貧しい生活をしているようである。


 着ている服も大部分は俺の時代と変わらない服の者も多かった。


 「ここが岡崎城の正門前だな!」

 「いかが、致しますか!!」

 「そう、いきり立つな!」


 数正に言うと馬を降りて拡声器を貰う。


 拡声器を受け取ると正門前に移動しておいた装甲車両の上に乗り、宣言をしてやった!


 「おい!信定の腰抜け野郎!!主君を差し置いて後方でヌクヌクして嬉しいか!」


 わーはっはっは(一緒に来ていた兵士と物見の観客たちが大いに笑った。)


 「今すぐ、城を明け渡せ!」


 「秀康様!あぶないですのでお下がりください!!」


 正門に信定配下の兵士達が攻撃する準備を始めていた。


 俺を助けようとする数正殿を手で止める。


 「おいおい、同じ松平の味方を民衆の見ている前で攻撃するほど落ちぶれたのか信定は!!」


 そう言うと正門が開いて一人の人物が大勢の護衛の兵士を引き連れて出て来た。


 「なんの騒ぎだ!竹千代君、遊びなら止めてもらえないか!」


 出て来たのは腰抜け信定に間違い無いだろう、身なりが立派だった。


 「俺は竹千代では無いぞ!秀康だ!!」

 「秀康?どういう意味だ!!」

 「清康公より秀でているから秀康だ!!」


 どひゃー(大勢の人が驚く)


 「なんて、罰当たりなんだ!!」

 「おまえが言えることかぁ?清康公が死んだ混乱を利用して岡崎城を奪った男が言って良いっことではないぞ!!」

 「なんだとぉ!言わせておけば!!」


 刀に手をかける信定


 「なんだ!やるのか!!かかってこい!!」


 手招きしてやった!!


 信定如き、小物など、この世界に慣れていなくとも倒せる自信はあるぞ!


 血管が浮き出る程に信定は切れるが周りの家臣に止められて岡崎城に戻っていった。


 「信定の奴が逃げ去ったぞ!よいか!!皆の衆!!!」


 括目せよ!という感じで手を民衆に向けて指すよう出す


 「我らの敵は織田である!断じて同じ松平などでは無い!!味方同士で争って何になるのであろうか!戦国の世とはいえ、守るべき仁義はある!!ましてや、我らは三河武士なのだ、お互いに争うのは愚かなことぞ!」


 こう発言した途端に大勢の人々が同調しだした。


 当然だが俺の曽祖父清康公は織田に殺された、祖父の広忠公だって織田に殺された。他の松平の家臣も兵士も皆織田に殺されたのだ!!そして、ここでは決して今川批判は行わない、広忠公を中心とした松平本家派は今川派である。俺らはあくまでも今川派を装わなくてはなくてはならない、どうせ城下に幾人か今川の間者が潜んでいるのは確実だしな!彼らを利用して義元公に媚びを売っておいて損は無い。


 「そうだ!そうだ!憎き織田を倒せ!!」

 「宿敵織田を殺せ!!」

 「「「そうだ!そうだ!織田を倒せ!」」」(大勢の大合唱)


 盛り上がってきたぞ!


 そう思ったら突然


 忠勝が俺の乗っている装甲車両に乗り移ってきた。そして傍に立つ


「「「あれは!本多平八郎だ!!」」」(大勢の民衆)


 本多平八郎、忠勝の祖父、父は若くして織田との戦いで死んだ、ただ死んだのではない!!織田との戦いで広忠公を救うために死んだのだ!生粋の忠臣にして活躍ぶりが余りに壮絶過ぎて織田家のトラウマになっているレベルである。


 傍に立って民衆の前に姿を晒しただけで民衆は涙を出して泣き、織田への憎しみを強める。


 「織田のせいで親も兄弟も子供も失ったああああ」

 「そうだ!憎き織田を滅ぼせ!!」

 「信定は岡崎城から出ていけ!」

 「他の松平の家臣たちは何をしているんだ!」


 こんな感じで騒ぎが大きくなる。


 すると大慌てで話を聞きつけた他の松平の家臣達が集まりだした。


 岡崎城が完全に包囲されたのである。


 おおお!これは予想以上に効果があったな!!


 その日、信定はお城を出ていくことを条件に幾つかの特権を要求して去っていった。特権の内容は要約すれば「お前には従いたくないから戦とかには参加しないからな!」という趣旨である。


 途中から参加した松平の家臣達が詫びを入れて来たので心暖かく受け入れた。彼らは貴重な戦力だし、これで恩を売ることができた!!(やったぜ!)


 直ぐさま広忠公に連絡して岡崎城に来てもらうことにした。

 これは幸先が良いと思った。


 開城させて招集した家臣達への恩賞を必死に考えながら岡崎城の縁側で昼飯のおにぎりを食べていた時である。


 「秀康様!大変でございます!!」


 突然一人の伝令兵が血相を浮かべてやってきた。


 「何事か!」


 「三河守護吉良義安様が弟の吉良義昭に戦いを挑まれ敗北し、現在、敗走して向かってきております!!」


 これは幸運なのでは無いだろうか!

 恩賞を考えていたが無い袖は振るうことはできない…

 吉良と戦えれば恩賞として渡すことのできるモノが手に入るはずだ!!


 「よし、すぐさま皆の者を招集させよ!」




 吉良家は三河守護にあたる家系である、最近まで吉良家は東西に分かれていたが両家を統合して力を付けたのが吉良義安である。

 義安は優れた武将だったが…東西統一後に弟に東条家を継がせることで吉良家の結束を固めようとした、これが裏目に出て吉良義昭が義安に戦いを仕掛ける事態に発展した。

 戦いは富永忠元の活躍で義昭側が勝利した、勢いに乗る義昭は敗走する義安を追う準備を始めている、西三河にある義安の領地を守る家臣達は既に怪しい動きをしており、帰る訳にはいかなかった。だからこそ義安は松平家に助けを求めようとしていた、この時、彼の頭には信定が念頭にあった。織田派に近く、義安も織田派に近いので助けて貰おうと考えたのである。


 だが、丁度、その頃に岡崎城を信定は離れてしまっていた、代わりに松平家で力を付け始める秀康という人物、義安は彼のことを知らないが…それでも自らの命を救うために秀康に謁見を望んだ。

 謁見は岡崎城で行われた。


「私は義安という者だが…助けてほしい」


 プライドの高い吉良家の人間だった義安は松平家の人間に頭を下げるのに抵抗があった。さらに秀康は自分よりも若く、イヤらしい目で見られている気がして気分が悪かった。

 だが、我慢するのだ!義安!!と心に言い聞かせて秀康に土下座して頼み込んだ。


 秀康陣営は既に助ける気満々だったが形式的には義安の要請による出陣という形を取ることを忘れてはいけないために茶番であるが一応は謁見という形をとった。もちろん義安陣営にとっては茶番のつもりなど一切無いので緊張と震えが止まらない会見となった。


「義安殿、お顔をお上げください」

「はい」


 義安は緑髪の中々の美人さんだった、秀康は内心嬉しかったのに違いない。しかし、今は重要な時なので厳かな雰囲気は崩さないように努めた。


「義安殿を助けたいと思うのですが…」


秀康が口を濁すようなことを言いそうになると義安が秀康の口を遮るように言葉を発する。


「助けてくれたら、何でも致しますので!!」


秀康としては拍子抜けである、プライドの高い吉良家から都合の良すぎる回答が飛び出るとは考えておらず…目が一瞬点になった。


「そうか!そうか!それでは助けない訳にはいかないな!」

「おお、助けてくれますか!」


義安は目を輝かせて秀康に近寄ってお願いのポーズで聞いてくる。


「もちろんだ!助けた時には…」

「何でも致しますとも!!」


笑いがこみ上げてくる秀康であった。


「では、出陣だ!」


周囲にいた家臣が声を上げる


「おおおおおお!」


 秀康はここで初めて敵の戦力を知る。


 まずは、我が軍、先の二千に追加の戦力を足して倍になったので約四千余りである。これに敗走してきた義安の二百人程度の兵士が加わる。我が軍自慢の戦車は三百両未満である。


「我が軍には三号ちゃんを超える四号ちゃんがいます!」(数正殿の発言)


 ※戦車は第二次世界大戦のドイツ系、セルロースナノファイバー技術で作られているため、装甲は五倍、重量は七分の一に落ちている。主砲の威力は極めて向上している。速力は中に乗る乗員や弾薬及び計器の分を足して考えても軽く60㎞は超えている。コストパフォーマンスが極めて良い、ミニ国家な戦国大名の懐に優しい。


 吉良義昭軍、推定約二万いると思われる。保有している戦車は今川家経由で北条家から購入したフランス系のソミュア戦車である。富永率いる精鋭が特に強力との話である。戦車の中にはB1重戦車も複数いると考えられる。あと三号ちゃんが多く配備されている。戦車量は二百両未満と劣るがソミュア戦車が極めて強力であり、スペック上は三号戦車の完全上位である。


 松平家の弱点は三号戦車と四号戦車の数が少ないことである。大部分は一号と二号になる、それと織田家から鹵獲したM3軽戦車が含まれている。二号戦車は重機関銃を装備しているので歩兵相手には無双出来る可能性があるとの話である。三号戦車を改造した三号突撃砲も配備されている。(通称:三突)


 他には我が軍は武士比率が高い、先の織田との戦いのせいで歩兵と言われる簡易足軽の定数が下回っているために生じている弊害である。他に我が軍にはパンツァーファウストと呼ばれる対戦車兵器があるとの話である。


「吉良義昭は今川家の意向を無視した軍事行動をしていると推測されます」


 数正殿曰く、今川方の諸勢力が吉良義昭軍に参加していないのが見られることから今川家の判断での軍事行動では無いと考えて良いとの話をしてくれた。


「それならば好都合だろう、敵との戦いは京ケ峰の赤石神社がある付近で戦えるのがベストだろう」


 京ケ峰の赤石神社がある付近は交通の便が良い、一方で山間で狭いので少ない戦力を集中して吉良軍と戦えるという好立地である。しかも、近くに長沢松平家の城が築かれており、上手くいけば彼らを取り込んで戦える可能性まであり、非常に都合が良さそうである。


「よし、長沢城に向けて全軍を進軍させよ!!」


 こうして松平軍は進軍を開始した。


長沢松平家


 父上は死ぬ時ですら俺に会ってくれなかった… 俺は絶望の末に死んだはずだった…人生こんな感じで終わるんだな…みたいなノリで死んだ。


 起きてみれば昔に見た記憶のある城にいた。そして若君として扱われることになった。死後の世界とは面白いというよりは残酷である。


 我の名前は松平忠輝である。その我が竹千代君の双子の弟として長沢松平家に養子に出された。何という皮肉か…父上の双子の弟だというではないか…この際、父上を殺すために暴れてやろうかと思い企みを胸に抱きながら日々を訓練と勉強に使って過ごしていた。


「竹千代君が元服して秀康と名乗って岡崎城を信定から取り戻したらしい」

「秀康が吉良義昭を討つために長沢に向かってきているらしいぞ!」


 そんな会話が聞こえた、意味が分からん、竹千代君が秀康を名乗った?…もしや、兄上も転生したのか?!


 兄上こと秀康と忠輝は仲が良かった、忠輝にとって唯一肉親で仲良く話が出来た人であった。それが早死にするとは考えてもいなかった。


「もし、兄上なら加勢しなければ!」


 そう思った忠輝は居てもたってもいられずに魔装甲冑を着て武器を片手に持って城を出ようとする。


「辰千代!どこへ行くのだ!!」


養父の松平康忠が止めてくる。


「父上!今こそ、松平家は結束して吉良と戦うべきです!!」

「まて、今川はどうする?」


 長沢松平家は今川派である、今川家と領地が近いことも有り、松平一門でいち早く、今川に接近した。そのために今川家からは独立勢力扱いを受けており、他の松平一門とは違う立場であった。それと同時に松平本家とは比較的友好関係にいるなど複雑な事情を抱えていた。


「父上!吉良義昭は今川の支持を受けておりませんぞ!今こそ松平本家と共に戦うのです!!」

「…確かにそうかもしれない」

「吉良軍が通り過ぎるのを黙って見逃す手はありません、秀康様が来るまで足止めしましょう」

「分かった!!お前の言う通りにしよう」


 松平康忠が同意したのを見ると忠輝は部下達に命じる。


「皆の者、武器を取って付いてまいれ!!」

「おおおおお!!」


 城を出た忠輝は吉良軍が通り過ぎるであろう場所に兵士達と共に潜んで待ち構えた。


 吉良義昭は東三河で義安に勝利後、勢力の地盤を固めると共に勝ち戦に乗じて集まってきた諸勢力を糾合して向かってくる松平軍に向けて進軍を開始していた。

 軍勢は寄せ集めが多かったが数は多い、それに主力の富永が率いる兵力は先の戦いの勝ちで士気が上がっていた。

 さらには航空戦力で劣る吉良義昭軍だが…好都合なことに松平家の航空戦力は酒井忠尚、松平信定などが抑えており、敵は優勢な航空戦力を使用できない、山間で狭い京ケ峰は敵に有利なように見えて…実は義昭側の弱点を補う上でも有利なように見えた。

 義昭軍は装備が旧式の勢力の兵が多い、実際に松平と戦えそうなのは一万くらいだと推測されたからである。


「これは勝てるやも知れぬ!」


 義昭は感慨深いものに浸る、あの松平とかいう野盗連中は吉良家が中央の戦いで弱体化したのを良い事に三河の支配者ズラしていた。そんな連中を退治する機会に恵まれたのは幸運である。


「敵襲!」


そう叫び声が聞こえた瞬間!


ドカーン!ドカーン!


「何事か!」


「報告いたします、長沢松平勢、約五百余りが毘沙門山付近から我が軍に攻撃を仕掛けてきました。」

「ええい、すぐさま迎撃せよ!」


 長沢松平軍は毘沙門山付近に布陣を敷いて敵を砲撃して誘い込んだ、そこを横合いから戦車で攻撃して敵を蹴散らすも敵の反撃で戦車を多数失う、その後、反撃に転じた吉良軍に包囲されないために長沢城に引き上げていく


「このまま追撃して撃滅しろ!!」

「義昭様、お待ちください」

「なんだ、富永よ、何かあるのか?」

「はい、ここは戦力を二手に分けましょう!」

「なに!?」

「一つは私が率いる七千の精鋭、もう一つは義昭様が率いる本隊です。」

「ほう、それで?」

「私は松平勢と戦います、義昭様は長沢城を包囲してください」

「なるほど…それであれば烏合の衆の活用にもなるか…」

「はい」

「分かった、富永の言う通りにしよう」

「ありがとうございます、最新鋭の兵器と武装は…」

「よいよい、貴公が主力だ!貴公が望むだけ引き抜いていくが良い」


 義昭は富永の献策を受け入れた。


こうして富永率いる七千以上の戦力が松平軍に向けて進軍を開始した。



ここに秀康率いる軍勢と勇将と称えられた富永忠元率いる吉良軍の最精鋭との戦いが始まる。

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