第8話 歯車愛好者。

やぁやぁ。私はマーサ。

君だね、旅人というのは。


一言、いいかな。

私は君が嫌いだ。


いや、君が何かした訳じゃない。

君だけに限らないんだ。

私は人間が嫌いでさ。


ん?ここでの仕事?

そんなの君に教える必要ある?


仕方ないな。

……歯車をね、弄っているよ。


どんな歯車かって?いろんな歯車さ。

ありとあらゆる歯車。

大きいものから小さいものまで。

君が見たことのあるものの中身から、存在も知らないものまで。


うーん。そうだな。


一番小さかったのは、命の中の歯車かな。

とても精巧でね、きっちりかっちり、狂わないように働くんだ。

一番大きいのは……秘密。

君に教えても意味がない。


……どうしても?


うーん……

仕方ないな。秘密なんだよ?

絶対、誰にも言わないでくれよ。


一番大きいのはね、この世界さ。

誰も知らないけど実はこの世界は皆、歯車が噛み合って進んでいるんだ。

全ては歯車のように定められている。

そうさ、君がここへ来ることも、私達のような****に出遭うことも。


いいかい。忘れて欲しい。

いや、君は忘れる。きっと。

私達の、この、世界の、記憶を。

君は、きっと、忘れる。


……いいね。

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