第7話 布教愛好者。

わたくし、チウーツカと申します。御見知りおきを。


突然で大変申し訳ないのですが、1つ確認させてくださいますか。

あなた、ご信仰はお有りで……?


嗚呼、良かった。わたくし、既に信仰をお持ちの方は苦手で。

わたくし自身?

ええ。勿論でございます。

この恰好を御覧になって。

わたくしは神に身を捧げたのです。


それにしても、あなたは何故神を信じないのです?


縁がなかった?


なら今がその御縁の時ではないでしょうか。

是非何か信仰なさいませんか。


わたくし、信仰の内容は問いませんの。

この世界にはヒトの数だけ神がいますでしょう。

そのどれもが尊いのだと思っていますから。

ですからあなたがどんな神を崇めていても、文句は言いません。


ただし、中途半端なものは赦しません。

信仰なさるなら心底傾倒せねばなりません。

その神が仰る通りの定められた生活、振る舞い、衣服を徹底するのです。


さぁ、どの神にお仕え致しますか。

唯一の神を崇め讃えるのも良し、数多の神々に感謝し日々を送るも良し、あ、いっそのことあなたが神になって自らの信仰を始めるのも良いかもしれません。

嗚呼、なんと甘美な。

贅沢者ですね、あなた。

わたくし、嫉妬で可笑しくなってしまいそうです。

あなたが神となる暁には、わたくしがあなた様の信仰を布教して差し上げましょう。

さぁ、さぁ、さぁ。

生き仏となるなら早めにどうぞ。

餓死?焼死?磔?串刺し?

嗚呼、わたくし、神が生まれる瞬間に立ち会えるのですね、うふふ。


……はい?

…………もう信仰している神がいた?


……そうですか。

…………ならば仕方ないですね。

………………神の御加護を。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る