第9話 毛髪愛好者。

や!や!聞こえてる?

ん、良かった。ぼくはカシイ。


お客さんじゃないでしょ?

知ってる。

ぼく、ずっと君に会いたくて。

興味があったんだよね。


ほら、君の髪の色さ。

なんていう不思議な色合いなんだろう。

君の姿を遠目から見た時から、ずっとこうして眺めていたいと思っていたんだ。


ね、良かったら、さ。

少しだけ、その……触らせてくれないかな。


え、いいの?いいんだね??

それじゃあ遠慮なく。


ふぅん。手触りはそう変わりないね。普通のと。

ふむふむ。

少し切らせてもらうことは出来ない?


ああ、大丈夫。

ぼくはこれでもここ1番の美容師なんだ。

そうだよ。みんなぼくが切ってる。

どう?切られてもいい気持ちになった?


お代?いいよいいよ。


だってこの髪の毛が手に入るんだもん。


はぁ……考えただけでも幸せだよ。

どうしようかな。

カツラにするほど切らせてもらえないし……

そっか、束ねておけばいいねッ。

髪の毛は腐らない。

また切りに来てくれた時に合わせていけば……

いつかショートの分くらいには……ふふふ。



…………え?

今日は辞めておく??


……あ。そう。

じゃあ。いつ来る?

…………チッ。


いや、なんでもない。

いつでもどうぞ。

……待ってるよ。

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